ヒルギダマシ

ヒルギダマシ（蛭木騙し）

ヒルギダマシ（学名：Avicennia marina）は、常緑の高木であり、潮間帯に生育するマングローブの一種です。この樹木はキツネノマゴ科ヒルギダマシ属に属しますが、分類によってはクマツヅラ科やヒルギダマシ科に位置付けられることもあります。特に沖縄に分布しており、日本国内では北限の種でもあります。

特徴

ヒルギダマシは、通常10m程度の高さに成長しますが、沖縄など生息地の北限では数メートルの低木として見られます。根は放射状に広がり、土壌の表面から垂直に突き出した呼吸根が特筆されます。この呼吸根は柔らかく弾力性が高く、マヤプシギと比較すると非常になめらかな触感です。また、根には葉緑素が含まれており、光合成に寄与します。

葉の形状は多様で、卵形、へら形、太披針形などがあり、革質で対生します。ヒルギダマシのもう一つの特徴は、葉に存在する塩類腺です。これにより海水に含まれる塩分を排出し、乾燥した環境でも生き延びることができます。夏季には塩分が結晶化することがあるため、その特徴的な形状を観察することも可能です。

雌雄異株であり、夏に集散花序を付け、5mm程度の黄色や橙色の小さな花を数個咲かせます。また、果実は2cmほどの楕円形で、熟すと灰白色に変わります。果実は海水に浮くため、海流によって分布を広げる役割も果たしています。

分布

ヒルギダマシは、熱帯や亜熱帯地域の海岸に広く分布しており、特に東アフリカ熱帯地域、東南アジア、オセアニア、ニュージーランドに見られます。日本国内では先島諸島に生育しており、特に石垣島と西表島が主要な生息地です。高い耐塩性を持っており、日本のマングローブ帯の最も外側で生育しています。その他の地域では15mに達することがありますが、日本では多くが1m程度の低木にとどまります。これは、潮位が高いときに海水に完全に水没してしまうことがあるためです。

日本における保護状況

ヒルギダマシは、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧IB類（EN）に指定されているほか、沖縄県版レッドデータブックでは準絶滅危惧に分類されています。

利用法

この樹木は、豊かな植生がある地域では木炭の材料や製紙の原料として利用されるほか、蜜を採取するための養蜂にも用いられています。また、その強い耐塩性を活かして、紅海海岸での植樹活動にも活用されており、海岸線の緑化に寄与しています。さらに、ヤギの飼料としての可能性も考慮されており、非常に高い利用価値があります。

保護活動

他国のヒルギダマシ林では、例えばイランのゲシュム島付近におけるヒルギダマシ林が「ハラー生物圏保護区」としてユネスコに指定されており、地域の生態系保全に重要な役割を果たしています。

ヒルギダマシは、その特異な生態系において重要な役割を果たすだけでなく、経済的・環境的にも多くの利点がある樹木です。

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