ヒロヘリアオイラガ

ヒロヘリアオイラガ（広縁青毒棘蛾）

チョウ目に属するイラガ科の昆虫で、学名は Parasa lepida とされています。その幼虫は、地域によっては「三吉（さんきち）」という通称で呼ばれることもあります。本種はインドや中国を原産とする外来種であり、日本では本州の中部以南に分布を広げており、環境省指定の「日本の侵略的外来種ワースト100」にもリストアップされています。

特徴

成虫

成熟したヒロヘリアオイラガの成虫は、丸みを帯びたずんぐりとした体型が特徴です。脚には茶色の毛が生えており、前から見るとまるで力士のようなユニークな姿に見えることがあります。前翅の外縁部は茶褐色をしており、その内側は鮮やかな黄緑色をしています。また、背部にも同様に黄緑色の毛が生えています。

卵

卵は樹木の葉などに、一度にまとめて産み付けられる性質があります。

幼虫

孵化したばかりの幼虫は、しばらくの間（およそ2齢まで）は群れをなして生活します。若い頃の幼虫は全体的に黄色っぽい色をしており、黒い棘が見られます。成長するにつれて体色は緑色に変化し、棘も緑色になりますが、一部にオレンジ色の棘が現れる個体も見られます。

この幼虫の持つ棘（毒針毛）には毒が含まれており、誤って触れてしまうと強い痛みを伴う腫れ（膨疹）が生じ、アレルギー性の皮膚炎を引き起こす可能性があります。そのため、観察や駆除を行う際には十分な注意が必要です。

蛹

蛹になる際には、樹幹などにしっかりとした繭を作ります。この繭は都市部の樹木などでもよく見かけることがあります。

毒性と対処法

ヒロヘリアオイラガの幼虫の棘に刺されると、激しい痛みに加えて、赤く腫れたりかゆみを伴う皮膚炎を発症する恐れがあります。もし刺されてしまった場合は、まずは刺さった毒棘を粘着テープなどで皮膚から慎重に取り除くことが推奨されます。その後、抗ヒスタミン剤などを用いて患部を消毒するなどの応急処置を行います。症状が軽い場合は、特別な治療をしなくても一日程度で自然に回復することもありますが、痛みがひどい場合や症状が改善しない場合は、速やかに皮膚科医の診察を受けるようにしてください。

幼虫の毒棘は独特な構造をしており、皮膚に刺さる際に先端が折れ、その圧力や腺細胞の収縮によって毒が体内に注入される仕組みになっています。ただし、脱皮した直後や幼虫が死んだ直後の毒棘は、まだ硬さが不十分なため刺さる危険性は低いとされています。この点は、幼虫の生死に関わらず毒性が持続するドクガ類の毒針毛とは異なる性質です。

生態と分布

ヒロヘリアオイラガの幼虫は、主に初夏から秋にかけて活動し、サクラやカキノキなど、様々な種類の広葉樹の葉を食害します。都市部を含む市街地でも比較的よく見られる昆虫です。

原産地はインドや中国ですが、日本では本州の中部以南に定着しており、外来種として分布を広げています。

毒を持つ幼虫との接触には注意が必要であり、特に庭木や街路樹などで見かけた際には、不用意に触らないようにすることが大切です。

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