ビオレータ・パラ

ビオレータ・パラ：歌に生きたチリの魂

ビオレータ・デル・カルメン・パラ・サンドバル（1917年10月14日 - 1967年2月5日）は、チリを代表するフォルクローレ音楽家であり、社会変革を訴えたヌエバ・カンシオン（新しい歌）運動の先駆者として知られています。

生涯

チリ中部のチヤン近郊で生まれたビオレータは、幼少期に父親の死と一家の貧困を経験します。姉のイルダと共に、生活費を稼ぐために食堂や酒場で歌い始めました。1932年に首都サンティアゴに移り、1936年に鉄道員のルイス・セルセダと結婚、二人の子供をもうけますが、1948年に離婚。その後、家具職人でテノール歌手のルイス・アルセと再婚し、さらに二人の娘を授かります。

1954年、演奏活動のためポーランド、フランスへと渡りますが、その間に幼い娘が亡くなるという悲劇に見舞われ、二度目の離婚を経験。その後は、チリを代表するフォルクローレ音楽家として国内外で活動しますが、経済的には苦しい生活が続きました。1960年頃には、スイス人音楽家ヒルベルト・ファブレと出会い、一時同居しますが、1966年にファブレがボリビアへ去り、失意の中、1967年に自ら命を絶ちました。彼女が支援し続けた社会主義者のサルバドール・アジェンデが大統領に当選したのは、彼女の死から3年後のことでした。

音楽活動

ビオレータ・パラは、チリ各地の伝統音楽を研究し、その要素を取り入れた独自の音楽スタイルを確立しました。彼女の歌は、社会の不平等や貧困、政治的な抑圧といった問題を鋭く批判し、人々に希望と勇気を与えました。

代表曲としては、「人生よありがとう (Gracias a la vida)」、「17歳に戻れたら (Volver a los 17)」、「天使のリン (Rin del angelito)」、「何という心の痛み (Que pena siente el alma)」、「ルンルンは北に去った (Run Run se fue p'al norte)」、「手紙 (La carta)」などが挙げられます。これらの楽曲は、現在も多くのアーティストによってカバーされ、歌い継がれています。

ヌエバ・カンシオン運動

ヌエバ・カンシオン運動は、1960年代から1970年代にかけてラテンアメリカで起きた音楽運動であり、社会変革や政治的なメッセージを歌に込めることが特徴です。ビオレータ・パラは、この運動の先駆者として、多くの若者に影響を与えました。彼女の音楽は、チリの社会運動や政治活動と深く結びつき、人々の連帯感と希望を育みました。

遺産

ビオレータ・パラの音楽は、チリの文化遺産として高く評価されており、彼女の作品は、現在も多くの人々に愛され続けています。娘のイサベル・パラと息子のアンヘル・パラも音楽家として活躍し、彼女の音楽的遺産を受け継いでいます。彼女の生涯は、歌を通して社会変革を目指した一人の女性の勇気と情熱を物語っており、今もなお、多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

ディスコグラフィー (一部)

Chants et danses du chili Vol. 1 (1956)
Violeta Parra, Canto y guitarra. El Folklore de Chile, Vol. I (1956)
Toda Violeta Parra: El Folklore de Chile, Vol. VIII (1960)
Las últimas composiciones de Violeta Parra (1967)

参考文献

「歌っておくれ、ビオレッタ　証言で綴るチリ・フォルクローレ歌手の生涯」　Bシュベルカソー・ロンドーニョ編著・平井征夫・首藤順子訳　新泉社1988年
「人生よありがとう～十行詩による自伝」　ビオレタ・パラ著　水野るり子訳　現代企画室　1988年

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