ビザンツの服飾

ビザンツの服飾

ビザンツの服飾とは、5世紀から15世紀にかけて東ローマ帝国（ビザンツ帝国）とその周辺地域で用いられた服装のことです。当時の社会において、衣装は着用者の社会的地位を示す重要な指標であり、種類、形状、色、量などが法律で細かく定められていました。

特徴

ビザンツ服飾の大きな特徴は、古代ローマの公服であったトガの衰退と、宝石や黄金、紋織の流行です。トガは名誉職となった執政官の象徴としてわずかに残りましたが、6世紀のユスティニアヌス1世の時代にはほぼ姿を消しました。代わりに、貴族のみが着用できるパルダメントゥムというマントが身分を示す外衣として用いられるようになります。トガの痕跡は、ロールムという装飾的な布帯として残りました。

ビザンツの服飾文化は、ローマ帝国末期のダルマティカを基本的に踏襲しましたが、以前の上流階級の衣装が無地のウール製であったのに対し、ビザンツ時代には綴れ織りの技術が飛躍的に発展しました。この技術は、「コプト織」と呼ばれる麻と毛を混ぜた織物を開発したコプト人によって広められました。エジプト風の豪華な首飾りやペルシア風の装飾品など、異民族の文化が流入したことも特徴です。また、以前は野蛮とされていたゲルマン人のズボンも広く着用されるようになりました。

上流階級の間では、金糸刺繍や宝石を縫い付けた衣装が流行し、ゆったりとした襞のある衣装は姿を消し、厚い生地に細かく刺繍が施された、硬い印象の衣装が主流となりました。さらに、キリスト教の聖職者の制服である法服が生まれたのもこの時代です。

男子の衣装

ビザンツの服飾は、基本的に前時代のものを踏襲していました。しかし、庶民の服装に関する資料は限られています。

一般庶民

肌着としてチュニックを着用し、その上にダルマティカを重ねました。ダルマティカは女性用よりも短く、膝下丈程度の長さであったと考えられています。上着としては、パリウムという巻き布が用いられていました。このスタイルは西欧の王族にも広まり、大流行しました。

上流階級

貴族は、身分の証としてパルダメントゥムを着用しました。パルダメントゥムは、長方形または台形の上質なウール製で、右肩をブローチで留めて着用するものでした。元々は高級軍人の衣装でしたが、貴族の衣服として引き継がれました。パルダメントゥムには、タブリオンと呼ばれる豪華な刺繍が施された四角いアップリケが付けられていました。正装時には、ロールムを肩から体の正面にY字型に巻きました。また、シュペルユメアルという錦織の飾り襟も身につけられました。

皇帝

皇帝や皇后の衣服は、ティルスで産出された貝紫色で染められていました。頭には月桂冠ではなく、ダイヤモンドで飾られ、真珠の紐が付いたペルシア風のディアデムという帝冠を被りました。足にはサンダルを履きましたが、これもペルシア産の子羊の皮で作られた赤や黄色のサンダルでした。

女子の衣装

キリスト教が国教化された後、身分の上下に関わらずダルマティカが着用されるようになりました。庶民の服装に関する資料は少ないですが、上流階級の男性に比べて変化は少なかったと考えられています。上流階級の女性の衣装は、男性よりも保守的でしたが、豪華さにおいては男性を凌駕していました。

キリスト教の教義に基づき、体の線を強調する服装は避けられ、長い袖の肌着にゆったりとした上衣を重ね、肌を露出しないスタイルが一般的になりました。また、外出時にはヴェールで髪や顔を覆うことが中流階級以上の女性の間で広まりました。

一般庶民

幅の狭い長袖チュニックの上に、肩から腕を小型のブローチで留めるストーラか、踝丈の広袖チュニックであるダルマティカを重ねて着用しました。チュニックの腰にはベルトを締め、外套としてパルラという一枚布を纏いました。

上流階級

黄金と宝石をふんだんに使ったビザンツの服飾は、西欧の王族たちの憧れの的でした。イヤリング、ネックレス、指輪、ブローチ、腕輪などが黄金と宝石で作られ、黄金のベルトなども用いられました。貴婦人の間では、古代エジプトで使用されていたような大きな衿型の首飾りが流行しました。髪はターバン型に大きく結い上げ、様々な冠型の髪飾りが流行しました。正装時には、パタギウムという布帯を掛けました。

参考文献

丹野郁 編『西洋服飾史 増訂版』東京堂出版。ISBN 4-49020367-5。
千村典生『ファッションの歴史』鎌倉書房。ISBN 4-308-00547-7。
* 深井晃子監修『カラー版世界服飾史』美術出版社。ISBN 4-568-40042-2。

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