ビスマス酸ナトリウム

ビスマス酸ナトリウムの概要

[ビスマス]]酸ナトリウム（Sodium bismuthate）は化学式NaBiO3で示される無機化合物で、高い酸化能力を持っています。この物質は、ある程度の吸湿性を持つものの、冷水には不溶であり、水に溶けないナトリウム塩の中でも特に稀有な存在です。また、試薬として使用する際には反応後の除去が容易であり、実際に市販されている製品の中には酸化ビスマス]や過酸化[[ナトリウムとの混合物が多く見られます。さらに、正味の化学式Na3BiO3で示されるビスマス酸三ナトリウムという化合物も存在しています。

構造

[ビスマス]]酸ナトリウムの構造はイルメナイト構造を持ち、ビスマス]の八面体中心と周囲の[[ナトリウムイオンが配置されています。ビスマスと酸素の間の平均結合長は2.116 Åで、この構造は酸化アルミニウム（Al2O3）と同様のコランダム構造に類似しています。酸素原子が密に配置された層の中に、異なる陽イオンが交互に並ぶという特長があります。

合成方法

[ビスマス]]酸ナトリウムを合成するには、通常、酸化ビスマス]の懸濁液を沸騰した水酸化[[ナトリウム溶液中で作り、次に臭素を加えて酸化を行います。この反応では、次のような化学反応式が成り立ちます。

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Bi2O3 + 6 NaOH + 2 Br2 → 2 NaBiO3 + 4 NaBr + 3 H2O
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別の合成方法として、酸化[ナトリウム]]と酸化ビスマス]の混合物を空気中で酸化する方法も存在します。これにより[[ビスマス酸ナトリウムが生成されます。

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Na2O + Bi2O3 + O2 → 2 NaBiO3
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この手法は、アルカリの存在下で二酸化マンガンをマンガン酸ナトリウムへ酸化する過程に似ています。

反応特性

ビスマス酸ナトリウムは高温多湿の環境下では水と反応し、分解を引き起こすため保存条件には注意が必要です。反応式は次の通りです。

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2 NaBiO3 + H2O → 2 NaOH + Bi2O3 + O2
$$

また、酸に触れると速やかに分解し、塩化水素の中では反応して塩素ガスを生成します。

ビスマス酸ナトリウムは、特にマンガンイオン検出において非常に役立つ試薬です。強力な酸化剤であるため、ほとんどのマンガン化合物を過マンガン酸塩に変えることができ、この形式は分光光度法によって測定が容易です。反応の一例は、次のように示されます。

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2 Mn2+ + 5 NaBiO3 + 14 H+ → 2 MnO−4 + 5 Bi3+ + 5 Na+ + 7 H2O
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さらに、ビスマス酸ナトリウムは様々な化合物の酸化に用いられ、特にアルコール類に対して柔らかい酸化反応を行います。反応の例として、グリコールやケトールの1,2-劈開反応が挙げられ、これらの反応は常温で酢酸やリン酸が加わることで進行します。

安全性について

ビスマス酸ナトリウムは軽度の刺激性を持つ物質で、口から摂取した場合には嘔吐や腹痛を引き起こす可能性があります。中程度の毒性を持つため、過剰な摂取は下痢やさらなる深刻な症状を引き起こすことがあります。中毒のリスクを避けるためには、使用時に適切な取り扱いが求められます。経口致死量（LD100）はラットの場合720 mg/kg、ウサギでは510 mg/kgとされています。

ビスマス酸ナトリウムは、実験室でのプルトニウムの分離方法としても使用されることがあります。

参考文献

• - Suzuki, Hitomi; Matano, Yoshihiro, eds (2001). Organobismuth Chemistry. doi:10.1016/B978-0-444-20528-5.X5000-9. ISBN 978-0-444-20528-5
• - Brauer, George (1963). Handbook of Preparative Inorganic Chemistry. 1 (2 ed.). Academic Press. pp. 627–628

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