ビスマルク体制

ビスマルク体制

ビスマルク体制とは、19世紀後半にドイツ帝国の宰相であったオットー・フォン・ビスマルクが構築したヨーロッパの外交・同盟関係を指し、ビスマルク外交とも呼ばれます。この体制下において、フランスは国際的に孤立することとなりました。

概要

普仏戦争後、プロイセン王国はドイツ人地域を統合し、プロイセン王家を頂点とするドイツ帝国を成立させました。しかし、新興国であるドイツ帝国は国内が不安定であり、フランスへの警戒も必要でした。そこで、ビスマルクはヨーロッパ諸国との同盟を通じて良好な関係を築き、フランスを外交的に孤立させることを目指しました。

1873年にはオーストリア、ロシアとの間で三帝同盟を締結しましたが、1878年のベルリン会議で表面化したオーストリアとロシアの対立により同盟は崩壊。その後、1881年に三帝協商を新たに締結し、1882年にはオーストリア、イタリアとの間で三国同盟を締結しました。イタリアが同盟に参加した背景には、チュニジアがフランスの保護国となったことへの不満がありました。

1887年、三帝協商もオーストリアとロシアの対立により再び崩壊したため、ビスマルクはドイツ単独でロシアとの独露再保障条約を締結し、ドイツの安全を確保するための複雑な同盟網を構築しました。これらの政策は、フランスの復讐を回避し、ドイツが東西両面で国境を接するロシアとフランスの接近を防ぐことを目的としていました。

また、ビスマルクはヨーロッパ列強による植民地拡大には消極的な姿勢を取りました。これは、フランスのナショナリズムと軍事力をヨーロッパ外の領土拡張に向かわせ、対独復讐を阻止するためでした。ただし、ビスマルク時代の後半には、他のヨーロッパ列強と衝突しない範囲で、東アフリカや西太平洋の島嶼部に植民地を形成する動きも見られました。

ビスマルクは、ヨーロッパの勢力均衡を維持し、ドイツの国際的地位を高めるために、「正直な仲買人」として列強間の利害対立を調停する役割を積極的に果たしました。1878年と1884年のベルリン会議はその典型的な例です。

ビスマルクの卓越した手腕により、ビスマルク体制はその目的を完全に果たし、19世紀最後の四半期にはヨーロッパに戦火はほとんどありませんでした。

しかし、1890年にビスマルクが辞職し、ヴィルヘルム2世が親政を開始すると、ドイツは帝国主義的な利害を追求するようになり、ビスマルク体制は解体に向かいました。ヴィルヘルム2世の拙劣な外交政策は列強諸国との対立を激化させ、フランスは露仏同盟を締結し、孤立状態から脱却しました。さらに、フランスの外相デルカッセは巧みな外交により三国同盟を無効化し、イギリスとの間に英仏協商を締結するなど、ドイツ包囲網を構築しました。

この包囲網を軍事行動で解決しようとしたのがシュリーフェン・プランであり、ヴィルヘルム2世の外交政策は第一次世界大戦の遠因となりました。

参考文献

君塚直隆 『近代ヨーロッパ国際政治史』 有斐閣コンパクト、2010年 ISBN 9784641173712
第12章「ビスマルク体制下のヨーロッパ」

関連項目

* テオフィル・デルカッセ

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