ビーチクラフト クイーンエア

ビーチクラフト クイーンエア

ビーチクラフト クイーンエア（Beechcraft Queen Air）は、ビーチ・エアクラフト社が手がけたレシプロ双発ビジネス機です。前作ツイン・ボナンザの設計を基に、胴体の断面を拡大し、より強力なエンジンを搭載したモデルとして登場しました。この機体は、標準で完全な計器飛行用機器を装備し、自動操縦装置や気象レーダーをオプションで搭載することが可能です。そのため、当時の旅客機と同等の性能を持つと評価されています。クイーンエアは大きく分けてモデル65、70、80、88の4種類が存在し、各モデルにはそれぞれ独自の特性があります。

1958年8月26日に初飛行したクイーンエアは、アメリカ陸軍がL-23 セミノールとして運用を始め、その優れた性能が正式に採用されました。高性能な双発機ツイン・ボナンザからの後継機として開発され、すぐにビジネス機として民間にも人気を獲得しました。1978年末までに約510機が製造され、その後も機体をベースにしたターボプロップモデルのキングエアが登場しました。

派生型

クイーンエアの設計には多くの派生型が存在し、以下に主なモデルを紹介します。

• - モデル65（1960年）: 初の量産型として登場。
• - モデルA65（1967年）: 後退角付き垂直尾翼を持ち、燃料タンク容量を増強。
• - モデル80（1961年）/A80（1964年）/B80（1966年）: 高出力型で、A80から翼幅が拡大し、大きな貨物を運ぶ能力を獲得。
• - モデル70（1968年）: モデルA65にB80の主翼を搭載したモデル。
• - モデル88（1965年）: 圧力調整機能を備え、丸型の客室窓が特長のモデル。
• - L-23F セミノール: 米軍向けのモデルで、その後U-8FやU-8Gに改称されました。
• - U-21 ユート（Ute）: 軍用機で、キングエアの試作型モデル87を基にし、胴体はクイーンエアを使用。客室窓は四角形のままです。

日本における運用

日本では、国土地理院が1960年にモデル65を導入し、写真測量のために利用しました。その後、海上自衛隊へと運行が委託され、「くにかぜ」の愛称が与えられました。海上自衛隊はツイン・ボナンザの後継機として、1963年から1970年にかけてモデル65を19機、モデルA65を9機導入し、両機は多発機パイロットの計器飛行訓練に使用されました。モデル65は1983年にUC-90「くにかぜII」と交替しました。

また、航空自衛隊の管理下にあったモデルA65の5機は、1980年に返却され、連絡や人員輸送機として南西支援飛行班に配備され、1999年まで使用されました。さらに、航空宇宙技術研究所（NAL、現在はJAXA）では1978年度に可変安定応答実験機として改造され、様々な実験が行われました。

諸元（モデルB80）

• - 全長: 10.82 m
• - 全幅: 13.98 m
• - 全高: 4.33 m
• - 翼面積: 25.72 m²
• - 空虚重量: 2,449 kg
• - 最大離陸重量: 3,493 kg
• - エンジン: アブコ・ライカミング IGSO-540-A1E6 水平6気筒ピストンエンジン（340馬力） × 2
• - 最大速度: 385 km/h(M0.31)（高度12,000 ft）
• - 巡航速度: 344 km/h(M0.28)（高度15,000 ft）
• - 実用上昇限度: 9,540 m
• - 航続距離: 2,671 km
• - ペイロード: 最大7名の乗客
• - 乗員: 2名

ビーチクラフト クイーンエアはその性能や利便性から、民間だけでなく多くの軍事機関にも取り入れられ、使用されてきました。その結果、航空機史の中でも重要な一翼を担っていると言えるでしょう。

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