ビーチクラフト スターシップ

ビーチクラフト スターシップの概要

ビーチクラフト スターシップ（Beechcraft Starship）は、先尾翼設計を採用したターボプロップ式の双発ビジネス機です。この航空機は、1986年から1995年の間に53機が製造されましたが、商業的には期待外れな結果となりました。

機体のデザイン

スターシップは、6から8名の乗客を乗せることができ、ビジネス機としては一般的な規模を持っています。操縦士は1名または2名で、1名での操縦でも耐空認証を得ています。特徴的なのは先尾翼の設計で、水平尾翼がない代わりに、デルタ型主翼の端に配置された垂直尾翼と方向舵があります。

エンジンは左翼と右翼の主翼にそれぞれ搭載され、プッシャー式のプロペラを使用しています。機首のカナードは可変翼型で、速度に応じて後退角を調整することができます。この動作は主翼のフラップとも連動し、機械式の操作ながら航空機の安定性を高めています。

また、スターシップの機体は先進的な素材で構築されています。軽量で剛性の高い複合材料（CFRP）が主に使用され、広々としたキャビンを実現しつつ、機体重量の抑制も行っています。しかし、この素材が開発においては障害となることもありました。

開発の経緯

1979年、ビーチクラフトは既存のキングエア200の後継機を必要としていたことから開発が始まりました。1980年には「プライマリ・デザイン330（PD330）」として初期設計に取り掛かりましたが、同社がレイセオンに買収された影響で一時中断しました。

1982年にカリフォルニアのスケールド・コンポジッツ社のバート・ルータンに開発を依頼し、CFRPと先尾翼の可変翼設計を取り入れました。設計はCATIAシステムを使用して行われ、1985年にビーチクラフトがスケールド・コンポジッツを買収することで一貫した開発が進められました。

試作機モデル115が1983年に初飛行し、1986年にはフルサイズの量産型モデル2000が初飛行を行いましたが、開発には多くの技術的課題がありました。特に、CFRPの使用に関連する部分で開発プログラムは遅延が生じました。

商業的な結果

1988年には最初の量産型スターシップが飛行しましたが、市場からの反応は鈍く、競争力に欠けていました。高価格設定（1機あたり400万ドル）と従来機との違いが少なかったことが原因です。53機の製造量のうち、実際に顧客に引き渡されたのはわずか11機でした。

その後も改良型のスターシップ2000Aやリースプログラムを展開しましたが、販売促進には繋がらず、最終的にはレイセオン社がスターシップの生産を中止する決定を下しました。

最後に

しかし、ビーチクラフトはその後もスターシップのサポートを続け、2010年時点でも9機のスターシップが運用可能な状態で存在していました。その中の一機は、バート・ルータン設計のスペースシップワンの捜索機としても利用されています。

スターシップは、その革新的なデザインと技術的挑戦によって航空機設計の歴史に一席を占めていますが、商業的には苦い思い出として残っています。

もう一度検索