ビートルズ物語

ビートルズ物語：ビートルズ人気と音楽を凝縮した異色の作品

1964年11月23日、キャピトル・レコードよりリリースされた『ビートルズ物語（The Beatles' Story）』は、ビートルズの米国盤6作目にあたるアルバムです。既存楽曲の抜粋や、ラジオDJによるインタビュー音源、オーケストラアレンジ楽曲などを収録した2枚組LPという、当時としては非常に珍しい構成が特徴的でした。

アルバムのコンセプトと制作背景

このアルバムは、当時アメリカで爆発的な人気を誇っていたビートルズとその現象「ビートルマニア」を記録した作品として企画されました。ライナーノーツには「ビートルマニアの物語と音楽の伝記」と記されており、ビートルズの音楽だけでなく、その熱狂的な人気ぶりを伝えることを目的としていたことがわかります。

当初は、1964年8月23日のハリウッド・ボウル公演のライブ音源を収録する予定でしたが、音質の悪さと観客の歓声の大きさを理由に断念されました。しかし、同公演の音源の一部（「ツイスト・アンド・シャウト」の48秒間）が収録されており、本作がビートルズの生演奏音源を初めて収録したアルバムとなりました。

プロデューサーにはロサンゼルスのソングライター、ロジャー・クリスチャンとディスクジョッキー、ゲイリー・アッシャーが起用されました。彼らはインタビュー音源の選定や編集、楽曲の構成などを担当しました。また、ホリーリッジ・ストリングスによるイージーリスニング風の楽曲アレンジも含まれており、多様な音楽的試みがなされています。音声解説はクリスチャン、ジョン・バブコック、アル・ワイマンが担当しました。

商業的成功と批評家の評価

『ビートルズ物語』は、シングル『アイ・フィール・ファイン』と同時発売され、アメリカで大きな成功を収めました。『ビルボード』誌のTop LPsチャートでは最高位7位を記録し、17週間チャートイン。さらに、1964年末にはアメリカレコード協会からゴールド認定を受けました。これは、ビートルズのアメリカにおける商業的な成功が明確になった後、1年以内に発売されたアルバムの一つという事実からも、その人気ぶりを物語っています。日本でも1966年8月5日にオデオンレコードから発売されました。

しかし、批評家の評価は様々です。作家バリー・マイルズは「露骨な搾取」と酷評した一方、『オールミュージック』のスティーヴン・トマス・アールワインは「ビートルズの活動期に発売された全アルバムの中で最も奇妙なアルバム」と評しつつも、ビートルズ人気とその成長を独特の視点で捉えた作品であると肯定的に捉えています。

歴史的価値とCD化

『ビートルズ物語』は、ビートルズの初期人気と、当時の音楽シーンを反映した重要な作品です。インタビュー音源や楽曲抜粋といった構成は、後のアーティストにも影響を与えた可能性があります。2014年にボックスセット『THE U.S. BOX』に収録される形で初めてCD化され、現在でも多くのファンに楽しまれています。このCD化により、歴史的価値の高いアルバムが改めて広く聴かれる機会を得ることとなりました。

収録曲（抜粋）

抱きしめたい (I Want To Hold Your Hand)
キャント・バイ・ミー・ラヴ (Can't Buy Me Love)
フロム・ミー・トゥ・ユー (From Me To You)
…and more

参考文献

Castleman, Harry; Podrazik, Walter J. (1976). All Together Now: The First Complete Beatles Discography 1961-1975.
Gaar, Gillian G. (2013). 100 Things Beatles Fans Should Know & Do Before They Die.
* …and more

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