ピイ (ファラオ)

ピイ（Piye）: 古代エジプト第25王朝の初代ファラオ

ピイ（紀元前747年 - 722年）は、エジプトの第25王朝の創設者であり、クシュ王国の第3代の王として知られています。彼の治世はエジプトの歴史の中で極めて重要であり、特にエジプトの政治的統一に向けた彼の奮闘に焦点が当てられています。

ピイの登場前の状況

ピイの父であるカシュタの時代から、ヌビア王家は上エジプトを支配していました。しかし、下エジプトでは、タニスの第22王朝やレオントポリス、第23王朝、サイスの第24王朝、さらにはヘラクレオポリスとヘルモポリスといった五つの勢力がひしめき合っている混沌とした状況にありました。ピイはこの状況を憂慮し、「旧宗主国の秩序とアメン神の権威を回復する」ため、エジプトへの遠征を計画しました。

遠征の開始とテーベの占領

軍を率いて北上したピイは、最初にテーベ（現在のルクソール）を占領します。テーベはアメン信仰の中心として知られる場所で、ここで彼はアメン神に捧げる儀式を行いました。また、彼は妹のアメンイルディス1世をシェプエンウエペト1世の養女として、神官団への影響力を強化しました。この動きにより、ピイはテーベのアメン神官団を強くコントロールすることができました。

テフナクト1世との対立

一方、第24王朝のテフナクト1世は、ヘルモポリスのニムロトなどと連携し、ピイに対抗する連合を結成しました。連合軍は早期にヌビア側のヘラクレオポリスを包囲しましたが、ピイは出兵し、戦いはヌビアの勝利に終わります。その後、ピイの軍は古都メンフィスへと進軍します。

メンフィスの攻略

メンフィスにはテフナクトが8000人を配置して防御を強化しましたが、ピイはナイル川の船を使用して水上から攻撃し、見事にメンフィスを落としました。この後、第23王朝のイウプト2世がピイに降伏した一方、下エジプトのラー信仰の中心都市ヘリオポリスにも進進しました。

謝恩と帰還

勝利後、ピイは降伏した王たちから多くの贈り物を受け取り、ナパタへ帰還しました。帰還後、彼はゲベル・バルカルの聖域でさらなる建築活動を行い、新たな神殿を改修・拡張し、その宗教的権威を示しました。しかし、この勝利が永続することはありませんでした。

テフナクトの反乱

ヌビア軍が帰還した後、テフナクト1世は約束を破り、独立します。彼の反乱はピイの存命中には鎮圧されることなく、テフナクトが紀元前720年頃に死去した後は、彼の息子が王位を継承しました。ピイは紀元前716年に逝去しますが、エジプトの統一は弟シャバカによって成し遂げられることになりました。

ピイの治世と業績は、クリスチャン・ジャックの小説『ブラック・ファラオ』を通じても多くの人に知られています。古代エジプトのファラオとして、彼は栄光を追い求める力強いリーダーの象徴であり、彼の影響力は時代を超えて評価されています。

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