ピエロ・デ・パルマ

ピエロ・デ・パルマ（Piero De Palma）は、1925年（または1924年）にイタリア南部のモルフェッタで生まれたテノール歌手です。長年にわたり、その詳細なキャリアは不明とされていましたが、1950年代から1990年代にかけて、脇役テノールとして数多くのライヴ録音とスタジオ録音を残し、オペラ界に大きな足跡を残しました。

生涯

デ・パルマは、合唱団員としてキャリアをスタートし、1948年にイタリア放送協会でソロ歌手としての活動を開始しました。1952年にはサン・カルロ劇場で歌劇場デビューを果たしましたが、その前年の1951年には、ローマで行われたデッカのテバルディによる『ラ・ボエーム』の最初の録音にも参加しています。その後、1992年のメトロポリタン歌劇場でのレヴァイン指揮『ファルスタッフ』まで、40年以上にわたり、70以上の作品、200を超える録音に関わりました。

特に、『トスカ』のスポレッタ役は彼の代名詞とも言える存在で、1950年から1992年までの間に16種類もの録音に参加しています。中には、マゼール指揮によるドイツ語の抜粋録音も含まれており、脇役テノールとしての彼の卓越した才能を示しています。また、日本でも1976年の第8次NHKイタリア歌劇団公演で、『道化師』と『アドリアーナ・ルクヴルール』を歌い、日本の聴衆にもその名を轟かせました。

1950年代には、アンジェロ・メルクリアーリやレナート・エルコラーニといった脇役テノールが活躍していましたが、デ・パルマは、その美声と優れたテクニックによって、彼らを凌駕する存在となりました。主役級の役としては、レオンティン・プライスとの『ドン・ジョヴァンニ』の二重唱をRCAに録音しており、彼の歌唱力を示す好例と言えるでしょう。

代表的な録音としては、『道化師』のベッペ役が挙げられます。マリオ・デル・モナコと共演した2種類のスタジオ録音に加え、1952年のベニャミーノ・ジーリとの共演や、1976年のNHKイタリア歌劇団公演でのプラシド・ドミンゴとの共演など、「おお、コロンビーナ」の名唱で、主役を凌ぐほどの存在感を示しました。その他にも、デッカへの『マノン・レスコー』のエドモント役や、『オテッロ』のカッシオ役など、その際立った美声によるみずみずしい歌唱が印象的です。

1980年代以降も、ヘルベルト・フォン・カラヤン、コリン・デイヴィス、ジェームズ・レヴァイン指揮による『ファルスタッフ』や、ゲオルグ・ショルティ、リッカルド・ムーティ指揮による『トスカ』の録音に参加するなど、その健在ぶりをアピールしました。デ・パルマは、脇役テノールとして、その卓越した歌唱力と演技力で、多くのオペラファンを魅了し、オペラ史にその名を刻みました。

もう一度検索