ピエール・シェンデルフェール

ピエール・シェンデルフェールは、1928年5月5日にフランスのシャマリエールで生まれ、2012年3月14日にパリ郊外の病院で亡くなったフランスを代表する映画監督、脚本家、そして作家です。彼の作品は、戦争という極限状態における人間の心理や行動を深く掘り下げ、多くの人々に感銘を与えました。息子に映画監督のフレデリック・シェンデルフェールと俳優のルドヴィク・シェンデルフェールがいます。

10代の頃から商業船で働き始め、その後、第二次世界大戦中にジョゼフ・ケッセルの小説『Fortune carrée』に感銘を受け、水夫を志すようになりました。海を見たことがなかったにもかかわらず、トロール漁船に乗り込み、後に軍の映画局で働くことになります。この経験が、彼の後の作品に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

彼はインドシナ戦争に3年間従軍し、記録映画の製作に携わりました。その後、週刊グラフ誌『パリ＝マッチ』の記者として、モロッコでの革命、ラオス、アルジェリア戦争などを取材し、ディエンビエンフーの戦いでは捕虜となりました。この時、共産主義プロパガンダのために戦争を撮影していたソ連の映画監督ロマン・カルメンと出会い、その経験が彼に大きな影響を与えたとされています。

1959年、ジョゼフ・ケッセル脚本によるドキュメンタリー映画『悪魔の通り道』で映画監督としてデビューを果たしました。その後、ピエール・ロティの小説を原作とした『ラムンチョ』と『氷島の漁夫』を続けて発表。これらの作品は、彼の映像作家としての才能を広く知らしめました。特に1965年の『317小隊』は、彼自身が原作・脚本・監督を務め、インドシナ戦争での経験を元にしたリアリティ溢れる描写が評価され、彼の代表作の一つとなりました。この作品には、ジャック・ペランが主演しており、その後もシェンデルフェールの作品に度々出演しています。

1976年には、小説『クラブタンブール』でアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞。翌年には、自身で映画化もしています。この作品もまた、彼の戦争に対する深い洞察と人間ドラマを描いています。彼の作品は、単なる戦争映画ではなく、その中で生きる人々の心の葛藤や希望、絶望などを繊細に描いている点が特徴です。

シェンデルフェールは、レジオンドヌール勲章コマンドゥール章、国家功労勲章オフィシエ章など、数々の勲章を受章しており、1988年には芸術アカデミー会員にも選出されています。彼の作品は、フランスだけでなく、世界中の人々に感動を与え続けており、彼の遺した映画や文学作品は、今後も長く語り継がれていくことでしょう。

フィルモグラフィー

『悪魔の通り道』（1958年、共同監督ジャック・デュポン）
『ラムンチョ』（1959年）
『氷島の漁夫』（1959年）
『317小隊』（1965年）
『Objectif 500 millions』（1966年）
『La Section Anderson』（1967年）
『クラブタンブール』（1977年）
『戦争と名誉』（1982年）
『戦場』（1989年）
『愛と戦火の大地』（1992年）
『Là-haut, un roi au-dessus des nuages』（2004年）

小説

『La 317e Section』（1963年）
『L'Adieu au Roi』（1969年）
『Le Crabe-tambour』（1976年）
『Là-haut』（1981年）
『L'Aile du papillon』（2003年）

受賞・栄誉

レジオンドヌール勲章コマンドゥール章
国家功労勲章オフィシエ章
芸術文化勲章オフィシエ章
教育功労章コマンドゥール章
ヴォーバン賞（1984年）
芸術アカデミー会員（1988年）

シェンデルフェールは、その生涯を通して、戦争の悲惨さや人間の尊厳、そして希望を描き続けました。彼の作品は、私たちに深い感動と問いを与え、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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