ピピン3世 (フランク王)

ピピン3世の生涯と業績

ピピン3世（714年 - 768年）は、フランク王国の宮宰カール・マルテルの次男として生まれました。彼は、父の死後、兄カールマンとともにフランク王国の実権を握り、後にカロリング朝を開いた初代国王として歴史に名を刻みます。

生い立ちと宮宰就任

ピピンは、幼少期を現在のベルギーにあたる地で過ごしました。父カール・マルテルは、ランゴバルド王国からの軍事支援を得るため、ピピンをランゴバルド王リウトプランドの養子としました。744年にはラン伯の娘ベルトラダと結婚し、カール、カールマンといった息子たちを含む多くの子をもうけました。

741年に父カール・マルテルが亡くなると、フランク王国の権力はピピンと兄カールマンに引き継がれました。異母弟のグリフォは軟禁され、743年には名目上の王としてメロヴィング朝のキルデリク3世が擁立されました。747年、カールマンが修道院に入ることを選び、ピピンは単独でアウストラシアの宮宰となり、フランク王国の実権を掌握しました。

王位簒奪とカロリング朝の成立

ピピンは、ローマ教皇ザカリアスに「王の称号を持つだけの者と、実質的な権力を持つ者のどちらが王であるべきか」という問いを投げかけ、実権を持つ者が王たるべきであるという回答を得ました。この教皇の支持を背景に、751年11月、ピピンはソワソンでフランク王に選出され、マインツ大司教ボニファティウスによって塗油の儀式を受けました。これにより、メロヴィング朝は終焉を迎え、キルデリク3世は修道院に幽閉されました。ピピンは、自らフランク王国の新たな王朝、カロリング朝を開いたのです。

ローマ教皇との関係とピピンの寄進

ピピンは、王位を承認してくれた見返りとして、ローマ教皇庁に貢献しました。754年から755年にかけて、ランゴバルド王国と戦い、ラヴェンナを奪い、756年に教皇ステファヌス2世に献上しました。この「ピピンの寄進」は、後の教皇領の基礎となりました。また、759年にはナルボンヌを奪還し、サラセン人をフランスから駆逐することに成功し、アキテーヌ地方も王国に組み込みました。ピピンの治世下、フランク王国の領土は拡大し、その権威は初代国王クローヴィス1世以来、最も高まったとされます。

754年、ローマ教皇ステファヌス2世はピピンをローマ貴族（パトリキ）に叙し、パリのサン＝ドニ大聖堂で再度塗油の儀式を行いました。この時、ピピンは王位の世襲を望み、息子のカールとカールマンにも塗油が行われました。

死と遺産

ピピンは、768年にサン＝ドニで亡くなり、サン＝ドニ大聖堂に埋葬されました。彼の死後、王国は息子たちであるカールとカールマンによって共同統治されることになります。特に、息子カールは後の「カール大帝」として、ヨーロッパ史に大きな足跡を残すことになります。ピピンの治世は、フランク王国の発展とキリスト教世界の拡大に大きく貢献し、その後のヨーロッパの歴史に大きな影響を与えました。

子女

ベルトラダとの間に以下の子女をもうけました。

カール（742年 - 814年）：フランク国王、神聖ローマ皇帝
カールマン（751年 - 771年）：フランク国王（カールとの共同統治）
ピピン（756年 - 762年）
ギゼラ（757年 - 811年）：シェル女子修道院長
ベルト
ロタイド
* アデライド

ピピン3世は、その短い生涯の中で、フランク王国を大きく変革し、後世に大きな遺産を残しました。

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