ナルボンヌ

ナルボンヌは、フランス南西部、スペイン国境近くに位置する歴史ある都市です。モンペリエとバルセロナを結ぶ国際列車の停車駅であり、プロヴァンス、トゥールーズ、カルカソンヌ、ボルドーといった主要都市へのアクセスポイントとなっています。

古代ローマ時代からの繁栄

ナルボンヌは、紀元前から古代ローマの重要な都市として発展しました。この地には野生のブドウが自生しており、退役軍人たちがワイン生産を始めたことが、その歴史の始まりです。ワイン生産の歴史は非常に古く、2006年まで欧州最大のオーガニックワイン展示会「ミレジム・ビオ」が開催されていました。

地理的特徴と自然

ナルボンヌの中心部は、地中海沿いのラグーン、バージュ＝シジャン湖の北側に位置しています。周辺にはエロール湖など５つのラグーンが点在し、塩性湿地、塩生植物の群落、ヨシ原、砂丘など多様な自然環境が広がっています。この一帯は、2006年にラムサール条約登録地として認定されました。

歴史的背景

紀元前120年、ローマのプロコンスル、グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスがこの地を征服し、属州化しました。彼はドミティア街道を建設し、ナルボンヌはプロヴァンスからヒスパニアへと続く重要な街道の拠点となりました。ナルボンヌは、ドミティア街道とアクィタニア街道の交差点に位置し、地理的に非常に重要な場所でした。

紀元前118年には、ルキウス・リキニウス・クラッススらが植民市を建設し、ナルボ・マルティウスという名で知られるようになりました。カエサルとポンペイウスの内戦時には、カエサルがナルボンヌにベテラン兵を定住させ、港を開発しようとしました。これにより、ナルボンヌはマッシリアへの橋頭堡としての重要性を増しました。

その後、地中海沿岸のガリア南部地区は「ガリア・ナルボネンシス」と名付けられ、ナルボンヌはその首都となりました。ローマの強力な統治下で、都市は経済的に発展を遂げました。12世紀には、宮廷風恋愛の精神が息づく文化の中心地として栄え、ユダヤ教の聖書解釈学の中心地としても重要な役割を果たしました。

衰退と新たな発展

14世紀になると、オード川の氾濫による川底の泥の堆積や、地中海の海面上昇の影響で、ナルボンヌは海港としての役割を失い、衰退していきました。しかし、16世紀には貿易ルート確保のため、ロビーヌ運河建設に着手しました。この運河は1787年にミディ運河と接続され、新たな交通網が整備されました。19世紀には鉄道網の発達により運河の重要性は低下したものの、ナルボンヌはワイン取引の中心地として、その重要性を維持しました。

主な出身者

ダヴィド・キムヒ：ヘブライ語・聖書学者 (1160-1235)
ピエール・ルヴェルディ：詩人 (1889-1960)
シャルル・トレネ：歌手
ディミトリ・ザルゼウスキ：ラグビー選手

姉妹都市

ヴェイルハイム (ドイツ)
アオスタ (イタリア)
グロッセート (イタリア)
サルフォード (イングランド)

ナルボンヌは、古代ローマ時代から中世、そして現代へと続く、豊かな歴史と文化を持つ魅力的な都市です。その自然環境、歴史的建造物、そしてワイン文化は、訪れる人々を魅了し続けています。

もう一度検索