ピー・シー・エル映画製作所

株式会社ピー・シー・エル映画製作所の歴史

株式会社ピー・シー・エル映画製作所（以下P.C.L.と略称）は、1933年12月5日に設立され、1937年9月10日に合併するまで東京に存在した映画製作会社です。P.C.L.はその名の通り、Photo Chemical Laboratory（写真化学研究所）の子会社であり、特にトーキー映画の先駆的な製作に関わっていました。

設立の背景

P.C.L.の設立は、1929年に始まる「写真化学研究所」が起点です。増谷麟や植村泰二らが中心となり、現像やトーキーの録音機材の研究を行いました。当時の日本では、トーキー映画は実験段階にあり、多くの映画がサイレント作品に留まっていました。1932年には、東京都世田谷区にトーキー撮影用の貸しスタジオを設立し、少しずつトーキー制作へと進展していきます。

P.C.L.映画製作所の設立は、こうした背景の中で、映画制作の新しい潮流を生み出すことを目的として行われました。設立時に製作部長として迎えられた森岩雄は、新たなプロデューサーシステムや予算制度、スタッフ・キャストの契約制度を導入し、日本映画界に新風を吹き込むことに貢献しました。映画青年の集まり「金曜会」のメンバーも次々と入社し、若い人材が集まる環境が整いました。

初期の映画制作

P.C.L.は設立前にいくつかの作品を製作しており、特に1933年に公開されたアニメーション作品『動絵狐狸の達引』が初の自社製作作品となりました。また、実写映画の初作である『只野凡児 人生勉強』も同年に公開されます。当初はなかなかヒットを得ることができず、メディアから厳しい評価を受ける時期もありましたが、1935年に公開された成瀬巳喜男監督の映画『妻よ薔薇のやうに』は高評価を得て、キネマ旬報ベスト・テンにて1位を獲得します。

合併とその後の展開

1937年、P.C.L.は母会社である写真化学研究所や他の映画スタジオとともに合併し、東宝映画が設立されました。この合併により、P.C.L.が持っていた東京のスタジオ施設は大きな役割を果たし、東京ではのちに多様なジャンルの映画が制作されることになります。合併後、京都における製作体制が移行し、時代劇が東京でも製作されるようになりましたが、1941年には京都のスタジオが閉鎖されてしまいます。

その後、1943年には東宝が東京宝塚劇場と合併することになり、現在の東宝へと進化を遂げていきます。

現在へのつながり

戦後も、P.C.L.の創設者たちは映画業界に深く関与しており、1951年には再び「株式会社写真化学研究所」を設立しました。この会社は1970年にソニーの傘下となり、「ソニーPCL株式会社」と改称され、今でも業界に一役買い続けています。

P.C.L.映画製作所は、日本映画の歴史において重要な位置を占める会社であり、その影響は現在の映画産業にまで息づいています。

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