ファウスト (バンド)

ファウスト (Faust)

ファウストは、1970年代にドイツで隆盛を極めたクラウトロック・シーンを代表するバンドの一つです。その音楽は、実験的で前衛的なアプローチが特徴であり、後のインダストリアル・ミュージックやノイズミュージックに大きな影響を与えました。バンド名はドイツ語で「拳骨」を意味します。

歴史

ファウストは、音楽ジャーナリストのウーヴェ・ネテルベックが、ヴェルナー・ディーアマイアーやジャン＝エルヴェ・ペロンら若いミュージシャンを集めて結成されました。ネテルベックは、プロデューサー、マネージャー、コンセプトデザイナー、作詞家として、バンドの活動を多岐にわたり支えました。

1971年、カンやアモン・デュールといったドイツのバンドが国際的な注目を集める中、ネテルベックはポリドールとの契約で高額な制作費を獲得し、ヴュンメの廃校にメンバーと籠り、集中的なセッションを行いました。

同年秋に発表された1stアルバムは、透明なプラスチックジャケットにレントゲン写真をプリントし、透明なディスクを収めるという凝ったデザインでしたが、商業的な成功には繋がりませんでした。1972年には2ndアルバム『ソー・ファー』をリリースしますが、これも商業的には成功しませんでした。

その後、ヴァージン・レコードと契約し、1973年に3rdアルバム『テープス』を発表。このアルバムは、未発表曲をコラージュしたもので、シングル盤と同価格で販売されました。これがイギリスのLPチャートでトップ10入りするヒットとなり、彼らの名前は広く知られるようになりました。

アメリカの実験映画作家トニー・コンラッドとの共作アルバムを経て、4thアルバム『IV（廃墟と青空）』を発表しますが、再び商業的な成功には至らず、ヴァージンとの契約も終了。しかし、レコメンデッド・レコードのサポートにより、作品の流通は続けられました。

再結成

1990年代に入り、ハンス・ヨアヒム・イルムラー、ヴェルナー・ディーアマイアー、ジャン＝エルヴェ・ペロンのラインナップで再始動を果たします。1998年には初来日公演も行われました。

1994年には、21年ぶりのオリジナル・アルバム『Rien』を発表。1996年には自主レーベル「Klangbad」を設立し、翌年にアルバム『You Know FaUSt』をリリースしました。

2007年には、創設者であるウーヴェ・ネテルベックが逝去。2008年には10年ぶりの来日公演を行いました。

2016年には、スラップ・ハッピーと共演し、ツアーを行うなど、精力的な活動を続けています。

備考

ファウストは、イギリスのカンタベリー・ミュージック・シーンとの繋がりが深く、特にスラップ・ハッピーとの交流はよく知られています。また、その活動期間中には数多くの伝説が生まれ、彼らのミステリアスでユーモラスな音楽性を象徴するものとして語り継がれています。

メンバー

現ラインナップ

ウェルナー・ディーアマイアー (Werner "Zappi" Diermaier) - ドラムス
ジャン＝エルヴェ・ペロン (Jean-Hervé Péron) - ベース/ギター

旧メンバー

ハンス・ヨアヒム・イルムラー (Hans Joachim Irmler) - キーボード
ルドルフ・ゾスナ (Rudolf Sosna) - ギター
グンター・ビュストフ (Gunther Wüsthoff) - サクソフォーン
アルヌルフ・マイフェルト (Arnulf Meifert) - ドラムス

ディスコグラフィ

ファースト・アルバム (Faust) (1971年)
ソー・ファー (Faust So Far) (1972年)
テープス (The Faust Tapes) (1973年)
IV（廃墟と青空）(Faust IV) (1973年)
Rien (1994年)
You Know FaUSt (1997年)
Faust Wakes Nosferatu (1997年)
ラヴィヴァンド (Ravvivando) (1999年)
セ・コン...コン...コンプリケ (C'est Com...Com...Complique) (2009年)
Faust Is Last (2010年)
サムシング・ダーティ (Something Dirty) (2011年)
J US t (2014年)
Fresh Air (2017年)
Daumenbruch (2022年)

参考文献

明石政紀 『ドイツのロック音楽』、水声社、1997年 ISBN 4891763493
大鷹俊一監修 『ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック』、音楽之友社、1999年 ISBN 4276960738

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