ファム・トゥアン

ファム・トゥアン

ファム・トゥアン（ベトナム語：Phạm Tuân、漢字表記：范 遵）氏は、1947年2月14日にベトナム民主共和国（現在のベトナム社会主義共和国）のタイビン省キエンスオン県クォクトゥアン社で生まれました。軍人、飛行士としての輝かしいキャリアを持ち、特にベトナムおよびアジアで初めて宇宙へ到達した人物として知られています。また、ベトナム戦争における類まれなる戦果によって国民的英雄となりました。

軍歴とベトナム戦争での活躍

ファム・トゥアン氏は1965年、ベトナム人民空軍に召集され、航空隊で整備士としてのキャリアをスタートさせました。その後、旧ソビエト連邦へ派遣されて促成飛行士課程を修了し、パイロットとしての道を歩み始めます。1967年に帰国すると、赤星空軍連隊に配属され、MiG-17やMiG-21といった戦闘機に搭乗しました。

彼はベトナム戦争に従軍し、卓越した飛行技術と勇敢さを示しました。特に1972年12月、アメリカ軍による北爆「ラインバッカーII作戦」において、その名を広く知られることとなります。12月27日の夜、彼はMiG-21を駆り、当時のベトナム空軍にとって最大の脅威であった米軍のB-52戦略爆撃機を迎撃するために出撃しました。前日の出撃ではレーダーの使用が仇となった経験から、この日は機上のレーダーをオフにし、地上の誘導員の指示のみを頼りに飛行しました。この戦術が功を奏し、ファム・トゥアン氏はミサイル2発によって見事B-52を撃墜するという歴史的な戦果を挙げたのです。この功績はベトナム軍にとって大きな士気の高揚となり、彼はベトナム社会主義共和国軍英雄称号を授与されました。

宇宙飛行士への道と偉業

ベトナム戦争終結後、ファム・トゥアン氏はさらなる軍事教育を受けるため、1977年にモスクワへ派遣され、Y.A.ガガーリン空軍アカデミーに入校しました。ここで高度な軍事知識と技術を修得し、1982年に卒業しています。

彼のキャリアにおけるもう一つの頂点は、宇宙飛行士としての活動です。1979年4月、彼は旧ソ連の主導する国際宇宙協力プログラムである「インターコスモス計画」の宇宙飛行士候補に選ばれ、星の街にある宇宙飛行士訓練センターで厳しい訓練を開始しました。その卓越した能力が認められ、1980年7月には「ソユーズ37号」の主乗組員に承認されました。バックアップ飛行士はブイ・リエム氏が務めました。

そして1980年7月23日、ファム・トゥアン氏は旧ソ連のバイコヌール宇宙基地からソユーズ37号に搭乗し、宇宙へと旅立ちました。翌日、宇宙ステーション「サリュート6号」とドッキングし、ステーション内で約1週間にわたり科学実験などを行いました。同年7月31日、彼は無事に地球に帰還しました。この宇宙飛行により、ファム・トゥアン氏はベトナム人として、そしてアジア人として初めて宇宙に到達した人物となり、世界の宇宙開発史にその名を刻みました。

その後のキャリアと栄誉

宇宙からの帰還後も、ファム・トゥアン氏はベトナム人民空軍に勤務し続け、重要な役職を歴任しました。空軍政治局長、国防省国防産業総局長などを務め、ベトナム国防の発展に貢献しました。1999年には中将に昇進しています。2007年12月31日に軍を退役しました。

彼の功績は国内外で高く評価され、数多くの栄誉が与えられています。

人民武装力量英雄
ベトナム労働英雄
ソ連邦英雄（1980年7月31日）
レーニン勲章（1980年7月31日）
ベトナム社会主義共和国労働英雄称号（1980年8月1日）
一等ホー・チ・ミン勲章（1980年8月1日）
名誉称号「ベトナム社会主義共和国宇宙飛行士」（1980年8月1日）
国際ピョートル大帝賞（2001年）

ファム・トゥアン氏は、ベトナム戦争における伝説的なパイロットとしての顔と、ベトナム初の宇宙飛行士としての顔という、二つの異なる分野で歴史的な偉業を成し遂げた人物です。彼の生涯は、勇敢さ、卓越した技術、そして祖国への献身を示すものであり、ベトナム国民にとって長く語り継がれる英雄としてその名を残しています。

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