フィアット・クロマ

フィアット・クロマは、イタリアの自動車メーカーであるフィアットが製造・販売していた自動車です。その歴史は、1985年から1996年まで生産された初代モデルと、2005年から2011年まで生産された2代目モデルに分けられます。

初代クロマ (1985-1996年)

初代クロマは、著名なカーデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけました。その外観は、5ドアハッチバックでありながら、ノッチバックのような特徴的なスタイルを持っていました。このモデルは、フィアット・アルジェンタの後継車種として登場し、フィアット、ランチア、アルファロメオ、サーブが共同で進めた「ティーポ4プロジェクト」の成果の一つです。このプロジェクトでは、プラットフォームを共有し、サーブ・9000、ランチア・テーマ、アルファロメオ・164といった兄弟車が存在しました。

イタリア国内では、クロマはタクシーや警察の覆面パトカーなどの公用車として広く使用されました。特に、ジョヴァンニ・ファルコーネ判事が暗殺された際、彼が乗っていたのが防弾装甲が施されたクロマであったことは特筆に値します。また、ロマーノ・プローディ元首相も、首相在任中に専用車としてクロマを使用していました。さらに、当時のフィアット会長であったジャンニ・アニェッリは、日常生活でクロマを愛用し、彼の専用車には兄弟車であるランチア・テーマ用のPRV V6エンジンやアルファロメオ用のV6エンジンが搭載されていました。彼の専用車は、彼のイニシャルにちなんで銀色に塗装されていました。

初代クロマは1996年に生産を終了し、フィアットはこのクラスの乗用車生産から一時撤退しました。

2代目クロマ (2005年-2011年)

2005年、クロマの名前は、新型のMPV（日本でいうトールワゴン）の名称として復活しました。この2代目モデルのデザインも、再びジウジアーロが担当しました。シャシーは、フィアットとGMの提携に基づいて、GMのイプシロン・プラットフォーム（オペル・ベクトラやサーブ・9-3と共通）が採用されました。

関連項目

フィアット
フィアット・アルジェンタ
フィアット・ティーポ
サーブ・9000
ランチア・テーマ
アルファロメオ・164

初代クロマは、その独特なデザインと、公用車や著名人に愛用された歴史から、イタリアの自動車史において重要な一台と言えるでしょう。2代目モデルは、異なるコンセプトのMPVとして登場し、現代的なニーズに応えるモデルとなりました。

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