フィニステレ岬の海戦 (1761年)

フィニステレ岬の海戦：1761年の英仏海戦の詳細

フィニステレ岬の海戦は、七年戦争中の1761年8月、スペイン北西部のフィニステレ岬沖で発生したイギリスとフランスの間の海戦です。この海戦は、イギリス海軍がフランス海軍に対して戦略的優位を確立する上で重要な役割を果たしました。

背景

1759年のキブロン湾の海戦での敗北以来、フランス海軍はイギリス海軍に対して制海権を争う力を失っていました。1761年4月、イギリスはこの優勢を利用してブルターニュの離島ベル＝イルに侵攻し、6月に占領しました。フランスは大西洋艦隊の大半が港に封鎖されている中、小艦隊を派遣して襲撃する作戦をとります。

デュジェ・ロンベール艦長の74門戦列艦クラージュ、ロングヴィル艦長の32門フリゲートのマリシューゼ、モンティニエ艦長のフリゲートのエルミオーネからなる小艦隊もその一つでした。当初西インド諸島に派遣されていましたが、襲撃を終えて8月にヨーロッパ水域に戻ってきました。

8月13日の夜、ロンベール艦隊はスペイン海岸に向けて航行中、フィニステレ岬で北東に向かう船隊を発見します。それはロバート・フォークナー艦長の74門戦列艦ベローナと、ジョン・ロギー艦長の36門フリゲートのブリリアントの2隻からなるイギリス艦隊で、リスボンからイギリスへ金貨を輸送中でした。ロンベール艦隊は敵を戦列艦2隻と誤認し、不利と判断して逃走を試みます。

戦闘の経過

8月14日午前5時、ロンベールはベローナを50門艦と誤認し、勝利を確信して反転します。マリシューゼとエルミオーネにブリリアントへの攻撃を命じる一方、クラージュ自らベローナに攻撃を仕掛けました。6時25分、クラージュはベローナの側面に接近し、舷側砲を至近距離から発砲します。フォークナーは2回目の砲撃を待ってから反撃し、ベローナの帆を逆帆にしてクラージュと並走します。

戦闘初期はクラージュの砲撃が効果的で、ベローナのミズンマストを破壊しました。しかし、フォークナーは冷静に指示を出し、ベローナの動きが鈍ると、ロンベールが逃げることを阻止しようと移乗攻撃を試みます。しかし、クラージュも6時45分にミズンマストを破られ、針路が乱れ始めます。

フォークナーは好機を逃さず、ベローナを回頭させ、クラージュの右舷船尾に向けて激しい砲撃を浴びせます。これによりクラージュは甚大な損傷を受け、多数の死傷者を出し、ロンベールは7時4分に降伏しました。

一方、ブリリアントはフランスのフリゲート2隻を相手に奮戦し、ベローナとクラージュの戦闘への介入を防ぎました。ロンベールの降伏が明らかになると、マリシューゼとエルミオーネは撤退しました。

イギリス側の損害は、ベローナが戦死6名、負傷28名、ブリリアントが戦死5名、負傷16名でした。フランス側の損害はクラージュだけで戦死240名、負傷110名に達しました。

戦闘後

拿捕されたクラージュはリスボンに曳航され、群衆の歓呼を受けました。後に歴史家は、「ベローナの行動は機敏な剣闘士のようだった」と評しています。クラージュは修理後、イギリス海軍に編入され、その後35年間就役し、アメリカ独立戦争やフランス革命戦争にも参戦しました。しかし、1796年12月18日、モンテ・アチョで嵐に遭遇し沈没、470名以上が犠牲となりました。

フィニステレ岬の海戦は、帆船時代の海戦史上、戦列艦同士の戦闘で決定的結果となった数少ない海戦の一つとして記憶されています。この海戦での勝利は、イギリス海軍の優位を確立し、七年戦争の帰趨に大きな影響を与えました。

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