フィリピン語群

フィリピン諸語：多様な言語と歴史的背景

フィリピン諸語は、オーストロネシア語族マレー・ポリネシア語派に分類される言語群です。フィリピン諸島全域に加え、インドネシア領スラウェシ島北部の一部地域でも話されており、150以上の言語が含まれる多様性に富んだ言語集団です。1991年、ロバート・ブラストによってこの言語群が提唱されました。

フィリピン諸島は台湾の近傍に位置し、オーストロネシア語族の拡散の中心地として知られています。しかし、フィリピン諸語の多様性は、他のオーストロネシア語族言語と比較してさほど高くありません。この事実は、初期の多様性が現在のフィリピン諸語の祖先となる言語によって置き換えられた可能性を示唆しています。

台湾諸語を除くと、フィリピン諸語はオーストロネシア語族の中で最も古い言語の一つとされています。スンダ・スラウェシ諸語では失われたオーストロネシア祖語の音韻的特徴、例えばシュワーやd-rの音韻対応などが、フィリピン諸語には保存されています。

文法的には、動詞の接辞と「焦点」標識の呼応によって格が表されるという特徴があります。これは、フィリピン諸語特有の文法構造と言えるでしょう。

フィリピン諸語の分類

フィリピン諸語は、地理的な分布や言語的な類似性に基づいていくつかの下位グループに分類されます。主なグループは以下の通りです。

北部フィリピン諸語: バタン諸語、イヴァタヌン語、イロカノ語、その他の北部ルソン諸語など。
中央ルソン諸語: パンパンガ語など。
中央フィリピン諸語: タガログ語（フィリピン語）、ビコール語など。タガログ語はフィリピン共和国で公用語として用いられており、最も広く話されている言語の一つです。
ヴィサヤ諸語: セブアノ語、ヒリガイノン語（イロンゴ語）、ワライ語など。
ミンダナオ諸語（南部フィリピン諸語）: ダナオ諸語、マギンダナオ語、マラナオ語など。
パラワン語群: カラミア諸語（カラミア・タグバヌア語など）、アボルラン・タグバヌア語など。
* その他: タウスグ語、アクラノン語など。

位置付けが未確定な言語群

上記以外にも、サンギル語群、ミナハサ語群（スラウェシ島北部）、トンサワン語、トンテンボアン語、トムブル語、トンセア語、トンダノ語など、フィリピン諸語との関連性が明確でない言語があります。ミナハサ語群については、フィリピン諸語に含める見解と、マレー・ポリネシア語派の他の言語群に分類すべきとする見解が混在しています。特に、ジェームズ・スネドンはミナハサ語群とフィリピン諸語、ひいてはマレー・ポリネシア語派との関連性について結論を避けています。

まとめ

フィリピン諸語は、その多様性と歴史的な奥深さから、言語学的に非常に興味深い言語群です。言語の起源、進化、そして周辺言語との複雑な関係性を解明するには、更なる研究が必要です。本記事では、現時点での研究成果に基づいて概観を示しましたが、今後新たな知見が得られることで、分類や歴史的解釈が変化する可能性もあります。

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