フェアトライアル

フェアトライアル：イギリス競馬史に名を刻んだ名馬

フェアトライアルは、1932年1月、イギリスで誕生した競走馬である。その生涯は、華々しい競走馬としての活躍と、種牡馬としての成功という二つの大きな舞台で彩られた。本稿では、フェアトライアルの血統、競走馬時代、そして種牡馬時代を詳細にたどりながら、その魅力に迫る。

複雑な血統と生い立ち

フェアトライアルの母レディジュラーは、競走馬として優れたスピードとスタミナを兼ね備え、活躍していた。しかし、フェアトライアル自身の誕生には、幾多のドラマが隠されていた。当初、レディジュラーの所有者であったワトソン氏は、近親交配による馬格の固定と、アウトクロスによるスタミナ強化を提唱する生産者兼馬学者であった。しかし、ワトソン氏の死去により、レディジュラーは競売にかけられ、J.A.デウォー卿に落札された。その後、ホームストーム牧場でフェアウェイとの配合により、8番仔としてフェアトライアルが誕生した。原田俊治氏の分析によれば、この配合はワトソン氏の理論に基づき、ステイヤー（長距離競走を得意とする馬）生産を目指したものと推測されている。しかし、フェアウェイは産駒にスタミナを伝えにくい側面があり、母レディジュラーも中距離以下の活躍にとどまっていたことから、フェアトライアルの競走生活を予測することは容易ではなかった。

虚弱な体質と華麗なる競走馬時代

フェアトライアルは発育が遅く、蹄が弱く、膝にも不安を抱える虚弱体質であった。そのため、デビューは3歳5月と遅くなった。しかし、ソールズベリー競馬場のロングリーストステークスで、名手ゴードン・リチャーズを鞍上に迎え、見事勝利を収める。続くアスコットのクイーンアンステークスでも勝利し、デビューから2連勝を飾った。

続くエクリプスステークスでは、当時のクラシック二冠馬ウィンザーラッドや2000ギニーステークス2着のセフトら強豪と対戦。結果は3着に敗れたが、ゴードンはウィンザーラッドの進路妨害が敗因であると主張した。その後、セントレジャーステークスへの出走を目指したが、流行性ぜんそくに罹患し、出走を断念。しかし、回復後には1マイルのレースで2連勝を飾り、1935年シーズンを5戦4勝という成績で終えた。

1936年も活躍は続き、スプリングプレートで勝利を収めるも、マーチステークスでは伏兵に敗れる。その後も勝利を重ねるも、リングフィールドパークプレート勝利後に後脚の腱を痛め、競走馬生活に幕を閉じた。

その活躍は高く評価され、フェアトライアルはイギリスのベストマイラーに選出された。ゴードン・リチャーズは、フェアトライアルの競走生活を通して、その騎手として常に寄り添っていた。

種牡馬としての成功と血統の偉大さ

1937年、フェアトライアルは種牡馬として新たなキャリアをスタートさせた。初年度の種付料は198ギニーだったが、最高で300ギニーに達した。ホームストーム牧場、そしてウォーレン牧場で繋養され、1958年にその生涯を終えた。

種牡馬としてのフェアトライアルは、大きな成功を収めた。初年度産駒がデビューした1940年には、イギリスの2歳リーディングサイアーに輝き、その後もリーディングサイアー上位に名を連ね続けた。1950年にはリーディングサイアーに君臨するも、翌年には順位を大きく落とすなど、その活躍には波があった。しかし、累計アーニングインデックス1.90という数字は、その偉大さを示している。

フェアトライアルは、コートマーシャル、パレスタイン、フェスツーン、ペティションなど、数々の名馬を輩出した。これらの産駒は短距離戦を中心に活躍し、フェアトライアル自身もマイル前後の距離で活躍していたことと一致する。一方で、スタミナインデックスは6.96と低く、長距離のレースで活躍する産駒は少なかった。この点は、イギリスと海外の競馬場のコース特性の違いが影響しているという見解もある。また、母父としても成功し、メルドやプレモニションといったセントレジャーステークス優勝馬を輩出している。

フェアトライアルの血統は、その後も競馬界に大きな影響を与え続けた。その血統を受け継ぐ馬たちは、世界各地で活躍し、現代のサラブレッドの血統に大きく貢献していると言えるだろう。フェアトライアルの生涯は、競走馬としての輝かしい活躍と、種牡馬としての偉大な成功、そして複雑ながらも魅力的な血統背景によって、イギリス競馬史に永遠に刻まれたと言えるだろう。

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