フェアバーン・サイクス戦闘ナイフ

フェアバーン・サイクス戦闘ナイフ：特殊部隊の象徴

フェアバーン・サイクス戦闘ナイフは、第二次世界大戦において連合国特殊部隊で広く用いられた、象徴的な戦闘ナイフです。上海共同租界警察に勤務経験を持つウィリアム・E・フェアバーンとエリック・A・サイクスによって開発されました。その独特のデザインと高い実用性から、現代においても高い評価を得ています。

歴史と開発

1940年11月、フェアバーンとサイクスは特殊部隊訓練センターにおいて、新たな戦闘ナイフの開発に着手しました。その結果生まれたのが、フェアバーン・サイクス戦闘ナイフです。1941年1月には最初の50本が製造され、その後、ブリティッシュ・コマンドス、落下傘部隊、特殊空挺部隊（SAS）、特殊作戦執行部（SOE）といった精鋭部隊に配備されました。

第二次世界大戦後も、その高い実用性から、世界各国の特殊部隊で広く使用され続け、現在でも多くのコレクターやミリタリーファンから高い人気を誇っています。ウェストミンスター寺院には、コマンドスを記念した金色のフェアバーン・サイクス戦闘ナイフが収蔵されているほどです。

設計と特徴

フェアバーン・サイクス戦闘ナイフは、近接戦闘における高い殺傷能力を重視して設計されました。細身の刃は、胸郭を容易に貫通できるよう設計されており、先端部は鋭く尖っています。握りにはくびれがあり、正確な操作を可能にしています。フェアバーン自身も著書『Get Tough!』の中で、ナイフのバランスと鋭さ、そして手にフィットする柄の重要性を強調しています。

製造されたナイフにはいくつかのバリエーションが存在します。刃渡り、柄の形状、握り部分の加工など、細部に違いが見られます。初期のモデルは刃渡りが約14cmでしたが、後に約17cm、約18cm、そして約19cmのモデルも製造されました。柄の素材や刻印なども、製造時期やメーカーによって異なっています。

特に、握り部分の滑り止め加工は、初期モデルのローレット加工から、より安価に製造可能なリングパターンへと変更されました。しかし、この変更は、濡れた状態での滑りやすさや、握りの安定性の低下といった問題点を生むこととなりました。

刃渡りは、ソビエト軍の厚手のコートを着た敵兵を貫通することを想定し、コートを含む衣類をすべて貫通できる長さに設計されました。

派生モデルとコピー

フェアバーン・サイクス戦闘ナイフの成功は、多くのコピーモデルや派生モデルを生み出しました。朝鮮戦争やベトナム戦争においては、様々な企業が独自の戦闘ナイフを開発・販売しました。ガーバーマークIIもその一つです。

アメリカ戦略諜報局（OSS）も、フェアバーン・サイクス戦闘ナイフを参考にOSSスチレットを開発しましたが、イギリス製のオリジナルに比べて品質が劣り、評判は芳しくありませんでした。

悪魔の旅団指揮官であったロバート・T・フレデリック中佐は、フェアバーン・サイクス戦闘ナイフを改良したV-42スチレットを開発しました。アメリカ海兵隊の特殊部隊、マリーン・レイダースも、フェアバーン・サイクス戦闘ナイフを踏襲したレイダー・スチレットを採用していました。

まとめ

フェアバーン・サイクス戦闘ナイフは、その高い実用性と象徴的なデザインから、第二次世界大戦のみならず、現代においても高い評価を受けています。その歴史、設計、バリエーション、そして派生モデルは、ナイフのデザイン史において重要な位置を占めています。 多くの特殊部隊で採用され、世界中のコレクターにも人気が高い、まさに伝説的なナイフと言えるでしょう。イギリスでは約200万本が生産されましたが、製造時期によって品質にばらつきがあったとされています。初期モデルは希少価値が高く、多くの兵士が私費で購入しようと試みたほどでした。

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