フェズ

フェズの概要

フェズ（アラビア語: فاس‎、英: Fez、仏: Fès）は、アフリカ北西端に位置するモロッコ王国の内陸都市で、歴史的な意義が深い場所です。アラビア語では「ファース」「アル＝ファース」と呼ばれ、時には「フェス」という表記も用いられます。この街は多くのイスラム王朝の首都として栄えた歴史を持ち、現在もモロッコ人にとって特別な意味を持つ都市であります。

地理と気候

フェズは、アトラス山脈の北西側に位置し、サイス平野の中でフェズ川とセブー川が合流する地にあります。北は地中海、南はサハラ砂漠に接する交易路の交差点でもあるため、古くから隊商や商人の重要な拠点として利用されてきました。フェズ市内は旧市街メディナと新市街ヴィル・ヌヴェル、そして周囲の居住地区で構成されています。特に旧市街は複雑な迷路のような道筋が特徴で、1981年にはユネスコの世界遺産に指定されています。

フェズは亜熱帯気候に属し、大西洋の影響を受けて夏は高温で、冬には降雨が多くなります。その周囲では小麦やオリーブ、ブドウなどの農業が営まれています。

歴史

フェズの創建は8世紀に遡ります。最初はイドリース朝の創始者イドリース1世によって築かれ、その後イドリース2世が拡張しました。以降、多くの移民とともに発展し、中でも919年から980年にかけて後ウマイヤ朝の影響を強く受けました。ムラービト朝とムワッヒド朝の時代には、フェズは学問や文化の中心地となりました。

特にマリーン朝の時代（1248年から）は、旧市街と新市街が分かれ、旧市街が経済の中心、新市街が行政の中心として機能しました。この時期、ユダヤ教徒の居住区メッラーフも設置され、宗教的・文化的に多様な社会が形成されました。

19世紀にはフランスによる占領を受け、1912年からは保護国として管理されました。この時、旧市街の文化財保護が進められ、現在のような美しい町として保たれています。

経済と産業

フェズの経済は主に手工業に支えられていて、特に皮なめしが有名です。旧市街には105種類の手工業が存在し、職人たちが組合を結成し伝統技術の継承に努めています。また、革製品や陶器の製作も盛んです。フェズブルーと呼ばれる陶器は特に評判で、さまざまな場面で使用されています。

観光と文化

世界遺産に登録されているフェズ・エル・バリの旧市街は多くの観光客を惹きつけます。狭い路地には多くのスーク（市場）があり、地元の手工芸品や食材を購入することができます。特にカラウィーン・モスクやアンダルス・モスク、アッタリーン・モスク等は重要な文化財として訪れる価値があります。

フェズの独特な建築や文化は、訪れる人々に深い印象を与え、モロッコを訪れる観光客にとって欠かせないスポットとなっています。

交通と姉妹都市

フェズは交通の要所としても機能しており、ラバトへ向かうルートや地域間のバスサービスが充実しています。また、姉妹都市としてフランスのストラスブールやモンペリエ、イタリアのフィレンツェなど、さまざまな国と交流を深めています。

このようにフェズは歴史と文化、経済が融合した魅力的な都市であり、今なお多くの人々に愛されています。

もう一度検索