フェラーリ・F186

フェラーリF186：1986年シーズンの挑戦

1986年のF1世界選手権でスクーデリア・フェラーリが使用したマシン、フェラーリF186は、前モデル156/85をベースに、ハーベイ・ポスルスウェイト率いるチームによって開発されました。このマシンは、革新的な技術と洗練されたデザインを融合させた、フェラーリF1の歴史における重要な1台と言えるでしょう。

デザインと技術革新

F186は、前モデルから大幅な改良が施されています。特に顕著なのは、CAD/CAM技術の導入です。これにより、設計と製造の効率化が実現し、より精密なマシンの開発が可能になりました。

デザイン面では、全高を160mm低くすることで空力性能を向上させました。また、特徴的なのは、これまでむき出しだったロールバーを高いエンジンカウルで覆い、リアウィングへの整流効果を高めた点です。コクピット内の計器類はデジタルメーターパネルへと進化し、ドライバーにとってより快適で情報量の多い環境が実現しました。ドライビングポジションも数cm低く設計されています。

パワートレイン

F186に搭載されたV6ターボエンジンは、過給機をKKK製からギャレット製に変更した点が大きな特徴です。ミケーレ・アルボレートの証言によれば、実際には前年途中からギャレット製に変更されていたとのことです。燃料搭載量の制限（220リットルから195リットルへ）に対応するため、燃料タンクは小型化されています。

エンジンは120度V型6気筒で、潤滑系には新たなオイル・スカベンジ・システムが採用されました。シリンダーブロックとシリンダーヘッドも新設計で、フェラーリ公式発表ではレース用セッティングで850馬力/11,550rpm、予選仕様では1000馬力オーバーのパワーを誇ったとされています。前モデルと比較して70馬力のパワーアップを果たしました。

トランスミッションは、フェラーリ製の5速ギアとZF製リミテッド・デフを組み合わせた横置きトランスミッションケースです。

シャーシとサスペンション

フロントサスペンションはプルロッド式を踏襲しつつ、トレッドが1cm広げられ、スプリング・ダンパーユニットはモノコック内に水平マウントというユニークな構成となっています。リヤサスペンションは全く新しいジオメトリーを採用し、スプリングダンパーユニットは垂直に近い角度でマウントされています。この設計は、ギアボックスに沿って後方へ排気される空気の流れを考慮したものです。

シーズン成績と歴史的意義

1986年シーズン、F186はウィリアムズ・ホンダやマクラーレン・TAGポルシェなどの強豪チームに競り勝つことができず、年間0勝という結果に終わりました。最高成績はミケーレ・アルボレートによるオーストリアGPでの2位でした。ドライバーズランキングでは、アルボレートが9位、ステファン・ヨハンソンが5位という結果でした。ヨハンソンは4度の3位表彰台を獲得しましたが、シーズン終了後にチームを離れました。

F187からマグネシウムホイールが採用されたため、F186はフェラーリF1最後のアルミホイール装着車という歴史的意義も持っています。

スペック

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