フェルミウム(英: Fermium、記号: Fm)は、原子番号100の人工放射性元素で、
アクチニウム系列の一部です。この元素は、より軽い元素に
中性子を照射することで生成される最重元素であり、人工的に生成される最後の元素とも考えられています。これまで、
フェルミウムの純粋な
金属形態は作られていませんが、19種類の
同位体が知られており、その中でも最も長い
半減期を持つのは
フェルミウム257で、100.5日です。
フェルミウムは1952年11月に最初の
水素爆弾実験「アイビー作戦」の中で発見されました。当初、
ウラン238が6つの
中性子を吸収し、いくつかのベータ崩壊を経て生成された新しいプルトニウム
同位体であるプルトニウム244が検出された際、より多くの
中性子を吸収した際の可能性が考えられ、最終的に
フェルミウムの発見につながりました。バーベリー校の研究者たちがこの元素を初めて特定したのは、非常に稀で重い元素を追い求めての成果でした。
特徴と生成
フェルミウムは、化学的には
アクチニウム系列の後期に位置し、主に三価(+3)の状態で存在します。
半減期が短く生成も難しいため、現在では科学研究の領域でわずかに使用されるのみであり、広く実用化されているわけではありません。放射線を発するため、
フェルミウムは安全性に注意が必要な元素でもあります。
フェルミウムは、主に核反応において生成されます。具体的には、核施設で軽い
アクチニウム原子核に
中性子を衝突させることによって生じます。最も広く生成されている
同位体は
フェルミウム255であり、これは1日未満という短い
半減期を持っています。実験条件により、少量のナノグラムから数ミリグラムの
フェルミウムが生成されることがあります。
化学的性質
フェルミウムの化学的性質は、主に溶液中の三価陽イオン(Fm³⁺)の形態で調査されています。
フェルミウムイオンは水和状態で出現し、様々な無機および有機リガンドと反応します。他の
アクチニウムと同様に、
フェルミウムは酸化還元反応においても重要な役割を果たします。特に、三価の
フェルミウムは安定した錯体を形成し、これが他の
アクチニウムの錯体よりも更に安定しています。
フェルミウムはほとんどの人々に触れる機会がないため、実際のリスクは少ないですが、放射線による影響から安全基準が設定されています。国際放射線防護委員会は、
フェルミウム253および257の年間曝露限界を定めており、それぞれ摂取量や吸入量に対する把握が必要とされています。
このように、
フェルミウムは人工的に生成される稀な元素であり、その生成方法や化学的性質、既存の使用方法に関する研究は、基礎科学の分野で今後も進められてゆくでしょう。