フェレンツ・フリッチャイ

フェレンツ・フリッチャイ

フェレンツ・フリッチャイ（1914年8月9日 - 1963年2月20日）は、ハンガリー出身で、主にドイツを中心にヨーロッパやアメリカで活躍した指揮者です。

生涯

ブダペストで生まれたフリッチャイは、幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ちました。父親は軍楽隊の指揮者であり、その影響を受けて6歳でブダペスト音楽院に入学。ピアノ、ヴァイオリン、クラリネット、トロンボーン、打楽器など、様々な楽器を学びました。また、コダーイやバルトークといった著名な作曲家から指揮と作曲を学び、音楽家としての基礎を築きました。音楽院卒業時には、自作の『「シラノ・ド・ベルジュラック」序曲』を指揮し、その才能を示しました。

卒業後、セゲドの軍楽隊指揮者、セゲド・フィルハーモニー、ブダペスト国立歌劇場、ハンガリー国立交響楽団（現ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団）の音楽監督を歴任し、着実にキャリアを重ねました。

1946年12月にはウィーン国立歌劇場の客演指揮者として招かれ、『カルメン』などを指揮。1947年には、オットー・クレンペラーの代役としてザルツブルク音楽祭でアイネム作曲の歌劇『ダントンの死』を世界初演し、大きな注目を集めました。

1948年11月、ベルリン市立歌劇場（現ベルリン・ドイツ・オペラ）でヴェルディの『ドン・カルロ』を上演し、当時音楽学生だったバリトンのフィッシャー＝ディースカウを見出しました。12月には、ベルリンのRIAS交響楽団（後のベルリン放送交響楽団、現ベルリン・ドイツ交響楽団）やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に客演し、その名をさらに高めました。

1949年からはベルリン市立歌劇場の音楽監督、RIAS交響楽団の首席指揮者を務め、ベルリンの音楽シーンを牽引しました。

1953年にはボストン交響楽団を指揮してアメリカデビューを果たしましたが、1954年10月に就任したヒューストン交響楽団では、運営方針を巡る対立から翌年1月に辞任しました。

1956年、バイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任。しかし、1958年秋頃から白血病の症状が現れ、長期の休養を余儀なくされました。1959年夏頃に指揮活動を再開し、ベルリン放送交響楽団の首席指揮者に復帰。

1960年春には、ベルリン市立歌劇場から再編されるベルリン・ドイツ・オペラの初代音楽総監督就任の契約を交わしましたが、健康状態を理由に辞退しました。

1961年のザルツブルク音楽祭では、モーツァルトの『イドメネオ』を指揮し、その演奏の評判によりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による追加コンサートが開催されました。同年9月には、ベルリン・ドイツ・オペラの杮落とし公演でモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』を指揮し、その後、コダーイの『ハーリ・ヤーノシュ』などを録音しました。12月にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団に客演し、ベートーヴェンの交響曲第7番などを指揮しましたが、これが生涯最後の指揮となりました。

1963年2月20日、白血病のためスイスのバーゼルの病院で48歳の若さで亡くなりました。彼の死後、フィッシャー＝ディースカウがフリッチャイ協会を設立し、指揮者カール・ベームが名誉会長を務めました。

演奏の特徴と評価

フリッチャイの演奏は、デビュー時から白血病発病までと、復帰後で解釈に大きな違いが見られます。しかし、幼少期からの音楽教育によって培われた各楽器への深い理解、作品への造詣の深さ、そして卓越したバランス感覚によって、生涯を通じて高く評価され続けました。同時代の作品への理解も深く、アイネム、フランク・マルタン、カール・オルフ、コダーイなど、多くの作曲家の作品を初演しました。

墓所

フリッチャイは、スイスのトゥールガウ州にあるエルマティンゲンの墓地に埋葬されています。彼の家族も同じ場所に埋葬されており、2015年には自治体によって記念碑として宣言されました。

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