ヴォーアル空港

ヴォーアル空港（Vágar Airport）

ヴォーアル空港は、北大西洋に浮かぶフェロー諸島にある唯一の空港です。フェロー語ではVága Floghavn、デンマーク語ではVágar Lufthavn、英語ではVagar Airportと表記されます。

位置と特徴

空港は、フェロー諸島の首都トースハウンがあるストレイモイ島の西に位置するヴォーアル島にあります。周囲を山に囲まれた地形、乱気流や霧が発生しやすい気象条件、そして比較的短い滑走路が、この空港を着陸困難な空港として特徴づけています。かつては、隣接する湖で水上機が利用されていました。

2002年には、ヴォーアル島とストレイモイ島を結ぶ海底トンネル、ヴォーアルトンネルが開通し、空港からトースハウンへのアクセスが大幅に改善されました。

施設

滑走路: 1,799m × 30mの滑走路が1本あります。滑走路の長さが制約となり就航できる機種が限られていましたが、2010年の延長工事により改善されました。
駐機場: 4機分のスペースがあります。
旅客ターミナル: 面積は2,363m²で、1980年代に建設されました。2010年には、空港運営会社のCI変更に伴い、ターミナルの正面にIATAコードである"FAE"をあしらった看板が設置されました。

歴史

イギリス軍基地としての建設

ヴォーアル空港は、第二次世界大戦中にフェロー諸島を占領していたイギリス軍によって、1942年から1943年にかけて軍事基地として建設されました。場所の選定にあたっては、平坦な地形、良好な進入経路の確保、ドイツ軍からの視認性の低さなどが考慮されました。また、水上機との連携も視野に入れ、湖に隣接する場所が選ばれました。1942年8月には最初の飛行機が着陸し、当初は2本の滑走路が交差する形で建設される予定でしたが、戦況の変化により1943年に計画は変更されました。終戦後、イギリス軍は撤退し、空港施設はデンマーク当局に引き継がれました。

民間航空の開始

戦後、1946年に短期間旅客機が運航されたものの、その後空港は閉鎖されました。1950年代には、アイスランド航空などが路線の開設を計画しましたが、デンマーク当局は安全上の理由から許可しませんでした。フェロー諸島への航空アクセス確保のため、サンドイ島に新空港を建設する案も浮上しましたが、実現には至りませんでした。

1963年、Sørvágurの住民であるHugo FjørðoyとLars Larsenの主導により、ヴォーアル空港は民間空港として再開されました。彼らはアイスランド航空と協力し、レイキャヴィーク-ヴォーアル-ベルゲン-コペンハーゲン線、ヴォーアル-グラスゴー線の運航を開始しました。その後、ノルウェーのBjørumflyがオスロへの路線を短期間運航し、1964年にはフェロー航空がカークウォール経由でコペンハーゲン線を運航しました。

空港の利用が本格化するにつれて、施設の規模や就航機種、運航時期などの制約が問題となりました。アイスランド航空は施設の拡張を求めましたが、地形的な制約からフルILSの導入が難しいことなどから、デンマーク航空当局はエストゥロイ島南部への新空港建設も検討しましたが、進展はありませんでした。コペンハーゲン線はその後もアイスランド航空によって運航されていましたが、1970年に着陸進入中のアイスランド航空機が空港西側のミキネス島に墜落する事故が発生し、翌1971年にアイスランド航空はコペンハーゲン線の運航を終了しました。

ジェット機の就航とアトランティック航空の設立

1971年からは、デンマークのマースク航空がコペンハーゲン線の運航を開始しました。マースク航空はスカンジナビア航空、Cimber Airとの共同出資でDanairを設立し、同社の構成会社の一社として路線を運航しました。当初はフォッカーF27を使用しましたが、1977年にはボーイング737が導入され、ヴォーアル空港に初めてジェット機が就航しました。

1987年には、フェロー諸島自治政府が出資してアトランティック航空が設立され、1988年からコペンハーゲン線の運航を開始しました。これにより航空運賃が低下しましたが、2004年にマースク航空は路線の運航を取りやめました。その後、Danish Air Transportが短期間コペンハーゲン線を運航しましたが、2006年には新たにフェロージェットが就航したものの、年末に破産し、再びアトランティック航空の独占となりました。

2007年に空港の管理がフェロー諸島に移管され、2008年にはP/F Vága Floghavnが設立されました。2009年には滑走路延長計画が開始され、2010年に工事が完了しました。

空港へのアクセス

Strandfaraskip Landsinsが運行する路線バスがトースハウンとの間を結んでおり、トースハウンの各ホテルと空港を結ぶバスも運行されています。

就航航空会社と就航都市

デンマークなどスカンディナヴィア諸国、アイスランド、イギリスの各方面への路線が運航されています。また、アトランティック・エアウェイズ・ヘリコプターがフェロー諸島内の各島へのヘリコプター便を運航しています。

過去の定期・季節運航路線

オーフス
オスロ、スタヴァンゲル
ストックホルム/アーランダ
アバディーン、エディンバラ、グラスゴー/プレストウィック、カークウォール、サンバラ

事件・事故

1970年9月26日、アイスランド航空のF-27がミキネス島に墜落しました。
1975年1月25日、マースク航空のF-27が着陸時に滑走路を逸脱しました。
1987年7月6日、Partenavia P.68が山に激突し墜落しました。

もう一度検索