ティエラ・デル・フエゴ州

ティエラ・デル・フエゴ州：歴史、経済、そして領土問題

ティエラ・デル・フエゴ州は、正式名称をティエラ・デル・フエゴ、アンタルティダ・エ・イスラス・デル・アトランティコ・スール州といい、アルゼンチンの最南端に位置する州です。その領域は、アルゼンチン本土とはマゼラン海峡によって隔てられたフエゴ島の東側部分に加え、イギリスとの間で領有権争いがあるフォークランド諸島（マルビナス諸島）、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島、そしてアルゼンチン領南極を含みます。これらの地域は、複雑な歴史と政治的な背景を持ち、ティエラ・デル・フエゴ州の特異性を形作っています。

歴史

ティエラ・デル・フエゴ州はアルゼンチンの州の中で最も新しく設立されたものの一つですが、その歴史は古く、約12,000年前から人が住み始めたとされています。ヨーロッパ人が到来する前には、ヤマナ族、アルカルフ族、セルクナム族、マネケネク族などの先住民族が約10,000人ほど暮らしていました。しかし、ヨーロッパ人の到来と共に、天然痘や麻疹などの感染症、略奪行為によって先住民族の人口は激減し、わずか50年後には350人にまで減少してしまいました。州都であるウシュアイアは、先住民の言葉で「湾に面して終わり」を意味します。この地域がヨーロッパ人に初めて発見されたのは、1520年のフェルディナンド・マゼランの航海時でした。

1828年、アルゼンチンはフォークランド諸島（マルビナス諸島）に流刑地を設置しましたが、1833年にイギリスが海軍を派遣して、アルゼンチン軍をこの地から撤退させました。1880年代に入ると、アルゼンチン政府はティエラ・デル・フエゴへの関心を強め、1881年にはチリとの間で国境を画定しました。1884年にはティエラ・デル・フエゴ政府が設立され、ウシュアイアに支庁が置かれました。

1883年頃にはティエラ・デル・フエゴでゴールドラッシュが始まり、ダルマチア沿岸から多くのクロアチア人が移住して金を探しました。ゴールドラッシュは電信の発達や移民の流入を促進しましたが、1910年頃には資源の枯渇と共に終焉を迎えました。しかし、開拓者たちはこの地に残り、北部平原を牧羊地として発展させました。現在では、クロアチア人、スコットランド人、バスク人、ガリシア人、チリ人などの移民が、牧場で働いています。

経済

ティエラ・デル・フエゴ州の経済は、1970年代以降、政府の補助金と豊かな自然資源によって発展しました。2006年には約26億ドルの生産額を記録し、一人当たり年間25,700ドルの収入を得ています。これはアルゼンチン平均の3倍に相当し、国内で2番目に高い数値です。税制上の優遇措置によって、製造業が盛んで、特に家電や電気関連のメーカーが多く立地しています。近年では、リオ・グランデに外国企業やアルゼンチン企業が進出し、特に韓国のサムスングループとアルゼンチンのテルトンは、HDテレビの製造工場を設置しています。

牧羊は農業収入のわずか5%を占めるのみですが、ウールやマトンの原料としてアルゼンチン市場に供給されています。原油や天然ガスも豊富に産出し、州経済の約20%を担っています。また、スキーリゾートや滝、氷河などの自然景観を活かした観光業も重要な産業の一つです。

領土問題

ティエラ・デル・フエゴ州は、フォークランド諸島（マルビナス諸島）やサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島など、イギリスとの間で領有権争いがある地域を含んでいます。ビーグル水道では、チリとの間で領有権争いがあり、ピクトン島・レノックス島・ヌエバ島の3つの島は特に問題となりました。1977年にイギリスのエリザベス2世の仲裁によってチリの領土とされ、1985年にはアルゼンチンとの間で平和友好条約が締結されました。

隣接州と行政区画

ティエラ・デル・フエゴ州は、マゼラン海峡を挟んでサンタクルス州と隣接しており、チリのマガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州とも国境を接しています。州内には、ウシュアイア・デパルタメント、トルウイン・デパルタメント、リオ・グランデ・デパルタメントの3つの行政区画があります。また、実効支配が及ばない地域として、Departamento Islas del Atlántico Surとアルゼンチン領南極が含まれています。

このようにティエラ・デル・フエゴ州は、歴史、経済、そして領土問題が複雑に絡み合った、アルゼンチンの中でも特異な存在です。その美しい自然と、多様な文化が共存する魅力的な州として、世界中の人々を惹きつけています。

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