フォボス・グルント

フォボス・グルント計画

フォボス・グルント（ロシア語: Фобос-Грунт）は、ロシアが推進した火星およびその衛星であるフォボスの探査計画です。主な目的は、フォボスの土壌試料を採取し地球に持ち帰ること、つまりサンプルリターンです。この探査機は、2011年11月9日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられましたが、地球周回軌道からの離脱に失敗しました。

経緯

このプロジェクトの始まりは1999年に遡ります。2001年に開発が開始され、基本設計は2004年に完成しました。ロシアが惑星探査機開発に取り組むのは、1996年に失敗したマルス96以来のことでした。最初の打ち上げ予定日は2009年でしたが、中国の火星周回探査機「蛍火1号」との共同任務が決定したため、万全の準備が進められました。その結果、打ち上げロケットはゼニットに変更されました。

しかし、2009年9月、打ち上げはすべて2011年に延期され、数ヶ月後には無事に宇宙に打ち上げられたものの、軌道からの離脱に失敗。軌道上での、必要な噴射が不可能となり、制御が効かない状況に陥ってしまうのです。

地球軌道脱出の不具合

ゼニットロケットによる打ち上げは無事成功し、衛星は地球を周回していました。しかし、ソフトウェアの問題によって衛星は姿勢を崩し、必要な噴射を実施できませんでした。このトラブルは、地上からの通信回復に難航をもたらしました。結局、衛星は自動モードで制御ができず、地球へ向かうことに。2012年1月15日、フォボス・グルントは地球の大気圏に再突入し、チリ南部の太平洋上に落下しました。

調査結果と原因

2012年2月、ロシアはこのミッションの失敗原因を調査し、ソフトウエアのトラブルがその根本にあったと結論付けました。搭載されたコンピューターがリブートされ、一時的にセーフモードに入ったことで、指令を受け付けなくなったのです。このリブートは、宇宙からの高電荷粒子の影響によって引き起こされた南北の地球周回が原因とされています。

再突入の影響

フォボス・グルントは約13,500kgという重さを有し、地球への再突入時には8トン以上の有毒な推進剤を地中に残した状態となりました。しかし、アルミ合金製のタンクに入っていたため、再突入の際の高熱で爆発することが予測され、地上への直接的な影響は極めて少ないと考えられています。また、探査機にはわずかな量の放射性物質も含まれていましたが、環境への悪影響はないとされました。

未来の計画

フォボス・グルントの完全な失敗にも関わらず、ロシアは2018年に2号機の打ち上げを検討しています。初号機の教訓を生かし、より効率的に計画を進める狙いがあるようです。宇宙探査はパートナーとしての国際的な協力を得ながら進展しており、次回の火星探査ではさらなる進展が期待されています。

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