フォルテ (企業)

フォルテ（Forte）とは

フォルテは、1922年から2007年まで存在したハンガリーの写真フィルムメーカーです。正式名称は「フォルテ写真化学株式会社（Forte Fotokémia Rt.）」、英語表記では「Forte Photochemical Co. Ltd.」となります。フィルム、印画紙、現像液などを製造・販売していました。

歴史

フォルテの歴史は、1922年3月にハンガリー王国の時代、イーストマンコダックの工場として始まったことに遡ります。場所は現在のペシュト県ヴァーチで、コダックは1910年代にすでに土地を取得していました。この工場は、コダックがヨーロッパ市場における需要に応えるための重要な拠点となるはずでした。

しかし、第二次世界大戦の影響で、ハンガリーの状況は大きく変化します。1945年5月8日、ハンガリーは敗戦国となりソ連の占領下に置かれます。その後の1946年2月1日にはハンガリー共和国が成立。1947年6月30日、コダックは同工場を手放すことになりました。この時期は、社会主義体制への移行期であり、私有財産の国有化が進められた時代でした。

1949年、工場は「フォルテ合資会社」として再出発しました。1970年代には、従業員1500人を抱える大工場へと成長しました。フォルテは、東欧圏において重要な写真用品メーカーとしての地位を確立し、自社ブランドのフィルムや印画紙を供給していました。

1989年10月23日、ハンガリー第三共和国が成立。1992年には、工場は株式会社化され、「フォルテ写真化学株式会社」として新たなスタートを切ります。しかし、市場経済への移行は、フォルテにとって厳しい試練となりました。

2004年、フォルテは破産宣告を受けます。翌2005年にはショモジ県チュルゴーの投資家グループが会社を買収し、「フォルテインヴェスト資本投資株式会社（Forteinvest Tőkebefektető Kft）」と社名を変更、10億フォリントの売り上げを記録しました。しかし、2006年には1億5,000万円の損失を出し、2007年1月にすべての生産を停止。従業員は数十人にまで減少していました。フォルテは、市場の変化に対応しきれず、その歴史に幕を閉じたのです。

しかし、フォルテの歴史はここで終わりませんでした。2010年、「ポリウォームトーン計画」が持ち上がり、スクラップ寸前だったフォルテ工場の印画紙生産設備が、ドイツで使用されることになったのです。この設備は、ドイツのフィルムメーカーであるアドックスに引き継がれ、フォルテの技術と遺産は、新たな形で受け継がれることになりました。

日本においては、長野県白馬村のグレイス（当時は京都府八幡市）が、フォルテの正規輸入代理店でした。フォルテの製品は、日本の写真愛好家にも親しまれていました。

主なフィルム製品

以下は、フォルテが生産していた主なフィルム製品の一覧です。現在はすべて生産が終了しています。

白黒フィルム

フォルテパン100: ISO100のパンクロマティック白黒ネガフィルム。120フィルムと135フィルムがありました。
ポルトレイトパン100: ISO100のパンクロマティック白黒ネガフィルム。120フィルムがありました。
フォルテパン200: ISO200のパンクロマティック白黒ネガフィルム。120フィルム、135フィルム、シートフィルムがありました。
フォルテパン400: ISO400のパンクロマティック白黒ネガフィルム。120フィルム、135フィルム、シートフィルムがありました。

カラーフィルム

フォルテカラースーパーFGプラス
フォルテカラースーパーPL
フォルテカラースーパーPH

これらのカラーフィルムは、具体的な仕様については不明な点が多く、詳細な情報が不足しています。

まとめ

フォルテは、ハンガリーの歴史と写真フィルム産業の変遷を象徴する企業でした。コダックの工場として始まり、社会主義体制下での国有化、そして市場経済への移行という、激動の時代を生き抜きました。残念ながら倒産という結末を迎えましたが、その技術と遺産は、現在もアドックスを通じて受け継がれています。

フォルテのフィルムは、その独特な描写とレトロな雰囲気で、今でも一部の写真愛好家から支持されています。この企業の歴史は、写真フィルム産業の盛衰を語る上で、重要な一例と言えるでしょう。

参考文献

A magyar kémia és vegyipar kronológiája, 1800-1950, Tájak-Korok-Múzeumok Egyesület, 1997年

外部リンク

forte-photo.net - 公式ウェブサイト（インターネットアーカイブ、2007年8月9日付）
Forte - カメラウィキ（英語）
* 5169751 - 同社の特許（1992年12月8日）

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