アドックス

アドックス（Adox）

アドックスは、ドイツを拠点とする写真フィルム、かつては写真機を製造していたブランドであり、フィルム、印画紙、現像液などを扱う企業です。1860年の創業以来、写真技術の発展に貢献してきました。特に、ヴィルヘルム・レントゲンと協力し、世界で初めてX線撮影を記録する写真乾板を開発したことで知られています。

現在、アドックスの商標を継承している企業は、フォトインペックス有限会社（Fotoimpex GmbH）です。事業会社としてはアドックス・フォトヴェルケ有限会社（ADOX Fotowerke GmbH）が運営されています。かつて存在したアドックス・フォトヴェルケ・ドクトル・C・シュロイスナー有限会社（ADOX Fotowerke Dr. C. Schleussner GmbH）は、現在は存在しません。

また、カナダではアドックス・フォトワーク・インク（Adox Fotowerke, Inc.）がアドックスの商標権を保持しています。このカナダの企業に関する詳細は、後述の「カナダ」の節、および「ブルーファイア・ラボラトリーズ」の項目を参照してください。

アドックスの歴史

アドックスの歴史は、大きく3つの時代に分けられます。

第1期：創業からシュロイスナー家による売却まで

1860年、カール・シュロイスナー博士がフランクフルト・アム・マインに世界初の写真材料工場を設立したのが始まりです。この工場は、アドックス・フォトヴェルケ・ドクトル・C・シュロイスナー有限会社として登録されました。

1895年、レントゲンが発見したX線を記録するための写真乾板を世界で初めて開発し、「シュロイスナー＝レントゲン賞」としてその名が残されています。1938年には、写真機製造のヴィルギンを買収し、写真機製造にも参入しました。ヴィルギンは、経営者の亡命により買収された背景があります。1920年代から1960年代には、ヴィースバーデンに工場を構え、「アドックスゴルフ」「アドックスポロ」といったカメラを製造しました。特に「アドックスKB14」「アドックスKB17」といったフィルムは、海外でも「ドイツ製ワンダーフィルム」として知られていました。

第2期：シュロイスナー家による売却からフォトケミカへの機材売却まで

1962年、シュロイスナー家が写真事業を売却したことで、「アドックス」の商標は一時的に使用されなくなりました。1972年には、アドックスの資産を取得していたデュポンが、工場の機材をクロアチアのフォトケミカに売却しました。これにより、フォトケミカの「エフケ」ブランドの製品には、アドックスの白黒フィルムの製法が使用されるようになりました。

第3期：フォトインペックスによる商標権取得から現在まで

2003年、フォトインペックス有限会社が失効していた「アドックス」の商標権を取得し、事業を再開しました。同時に、アドックス・フォトヴェルケ有限会社を設立し、事業を継続しました。同年、カナダでもアドックスの商標権を取得した企業がありましたが、フォトインペックスがカナダでのライセンスを取得し、全世界での販売権を保持することになりました。2009年には、バード・ザーローにフィルムや印画紙の生産拠点を設けました。現在も、過去のフィルム製造に使用された機材が継続して使用されています。

アドックス・フォトヴェルケのウェブサイトでは、「110フィルム」の復活プロジェクトに関する情報が公開されています。また、「126フィルム」製品であるアドックスADC200インスタマチックについては、生産に必要な部品の調査が行われており、情報開示は2012年末まで待つ必要があるとのことです。

カナダにおけるアドックス

カナダのカルガリーには、アドックス・フォトワーク・インクという企業が存在します。この会社は、「アドックスの歴史と価値」に触発された感光材料の製造販売会社であり、カナダでのアドックスの商標権を保持していますが、アドックス製品の販売は行っていません。カナダにおいては、ドイツのフォトインペックスがアドックス・フォトワークからカナダでのライセンスを得て、直接販売を行っています。アドックス・フォトワーク・インクは、「ブルーファイア」ブランドの製品を独自に製造販売しており、これによりフォトインペックスは「アドックス」ブランドを全世界で使用することが可能になっています。

主な製品

フィルム

アドックスは、過去に様々な種類のフィルムを製造・販売してきました。以下に主な製品を記載します。

第1期:
アドックスKB14 - ISO25（生産終了）
アドックスKB17 - ISO50（生産終了）
アドックスC15 - カラーネガフィルム（生産終了）
アドックスC18 - カラーネガフィルム（生産終了）
アドックスNC17 - カラーネガフィルム、ISO50（生産終了）
アドックスユカフィルム - 裏紙付35mmロールフィルム、変形「3×4cm判」（アドックスユカ写真機専用、生産終了）
アドックス14 - ISO25（生産終了）
アドックス17 - ISO50（生産終了）
アドックス21 - ISO100（生産終了）

第3期:
アドックス HR-50
アドックスシルバーマックス
アドックススカラ160
アドックススカラ50
アドックスPAN-X REVERSO SUPER8
アドックスアドカラーADC200インスタマチック - 「フェッラーニア200」のOEM品、ISO200、126フィルム（生産終了）
アドックスクラシックパン100 - 「フォルテパン100」のOEM品、ISO100（生産終了）
アドックスクラシックパン200 - 「フォルテパン200」のOEM品、ISO200（生産終了）
アドックスクラシックパン400 - 「フォルテパン400」のOEM品、ISO400（生産終了）
アドックスCMS20
アドックスパン100 - 「アグフアAPX100」のOEM品、ISO100
アドックスパン400 - 「アグフアAPX400」のOEM品、ISO400
アドックスCHS25 - 「エフケ25」（「アドックス14」に対応）のOEM品、135フィルム・120フィルム・シートフィルム
アドックスCHS50 - 「エフケ50」（「アドックス17」に対応）のOEM品、135フィルム・120フィルム・シートフィルム
アドックスCHS100 - 「エフケ100」（「アドックス21」に対応）のOEM品
アドックスディスプレイフィルム - オルソマティックフィルム
アドックスオルト25 - オルソマティックフィルム
アドックスオルトCT - オルソマティックフィルム

現像液

アドナル/ロジナール
FX-39
アトマル49

写真機

アドックスは、1960年代までに様々な写真機を製造しました。これらの製品は、アドックス・フォトヴェルケ・ドクトル・C・シュロイスナー有限会社によって製造されました。以下に主な製品を記載します。

120フィルム使用:
アドックステンポ - 6×4.5判フォールディングカメラ
アドックスゴルフ - 6×6判フォールディングカメラ
アドックスゴルフII - 6×6判フォールディングカメラ
アドックスゴルフIV - 6×6判フォールディングカメラ
アドックスゴルフ45S - 6×6判フォールディングカメラ
アドックスゴルフ63 - 6×6判フォールディングカメラ
アドックススポーツ - 6×9判フォールディングカメラ（6×4.5判あり）
アドックススタート - 6×9判フォールディングカメラ
アドックストランフ - 6×9判フォールディングカメラ
アドックス66 - 6×6判ボックスカメラ
アドックスブリッツ - 6×6判ボックスカメラ

127フィルム使用:
アドレット3×4

135フィルム使用:
アドレット - 「ヴィルギンエディネックス」のリネイム
アドックス300
アドックス500 - プロトタイプ
アドックスゴルフI
アドックスゴルフIA
アドックスゴルフIIA
アドックスゴルフIIIA
アドックスポロ
アドックスポロ2
アドックスポロ1S
アドックスポロマート
アドックスポロマート1S
アドックスポロマティック3S

35mmフィルム使用:
アドックスユカ - 裏紙付35mmロールフィルム「アドックスユカフィルム」（3×4cm判）を使用する写真機

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