フォルティスグループ

フォルティス・フィナンシャル・グループ (Fortis Financial Group)

概要

フォルティス・フィナンシャル・グループは、ベルギー王国とオランダ王国を主たる拠点とし、かつて欧州において重要な地位を占めていた総合金融機関です。銀行業務、保険業務、資産運用などを幅広く手掛け、欧州大陸における主要な金融グループの一つとして認知されていました。2008年に発生した世界金融危機の影響を大きく受け、経営が行き詰まり、その事業は複数の金融機関や各国政府によって分割・承継され、最終的に企業体としてのフォルティスは消滅しました。

設立と発展

フォルティスの起源は、1990年にオランダの主要な保険会社であったAMEV社と、同じくオランダの貯蓄銀行を母体とするVSBグループ社が合併したことに遡ります。この合併により、銀行と保険を兼ね備えた新たな総合金融グループが誕生しました。その後、事業規模の拡大を目指し、1998年から1999年にかけて、フランスの旧スエズSAが所有していたベルギーの有力金融機関を買収するなど、積極的に事業基盤を強化しました。これにより、フォルティスはベネルクス三国を中心に、欧州におけるプレゼンスを高めていきました。

かつての隆盛

フォルティスは急速に規模を拡大し、欧州を代表する金融グループの一つとしての地位を確立しました。従業員数は全世界で8万人を超え、広範なネットワークを通じて多様な金融サービスを提供していました。特に、2007年度の銀行部門の売上においては、オランダのINGグループに次ぐ第2位にランクインするなど、その事業規模と影響力は非常に大きなものでした。この時期が、フォルティスにとって最も栄華を誇った時代と言えるでしょう。

構造変化と世界金融危機

隆盛を誇る一方で、フォルティスは内部的な構造改革も進めていました。例えば、2003年には、以前買収したベルギー総合会社の香港支店であったGenerale Belgian Bankを中国工商銀行に売却するなど、一部事業の見直しも行われていました。しかし、2008年に世界金融危機が勃発すると、サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱は、フォルティスの経営を直撃しました。大規模な損失発生や資金繰りの悪化により、経営破綻の危機に瀕しました。

解体と事業承継

経営危機に陥ったフォルティスを救済するため、ベルギー、ルクセンブルク、オランダの各国政府が介入しました。2008年10月5日には、ベルギー政府とルクセンブルク政府の仲介のもと、フォルティスのベルギー事業、ルクセンブルク事業、およびアセットマネジメント部門をフランスのBNPパリバが株式交換方式で買収することが合意されました。続いて、2008年10月14日には、オランダ政府がフォルティスのオランダにおける銀行部門と保険部門、さらにはフォルティスが共同で買収に関わっていたABNアムロ銀行の資産の一部を、約168億ユーロを投じて買収しました。これにより、フォルティスのオランダ事業は事実上国有化されることとなりました。ベネルクス三国の政府による事業分割と売却・国有化を経て、主要な銀行事業はフォルティスグループから切り離されました。

グループの終焉

主要な銀行事業が承継された後、フォルティスグループに残された保険部門などの事業は、一時的に「Fortis Holding」として存続しました。しかし、その後も再編は続き、2010年4月にはFortis Holdingが「エイジーアス」（現在はアジアス）に商号を変更し、中核であった保険部門をエイジーアスとして独立させました。この時点で、「フォルティス」の商標権はBNPパリバに移管されました。さらに、オランダ政府に国有化されていたフォルティスのオランダ部門は、同じく国有化されていたABNアムロ銀行と2010年7月に合併し、新生ABNアムロ銀行として統合されました。これにより、法人格としてのフォルティス・フィナンシャル・グループは完全に解消されました。かつてユーロネクスト・ブリュッセルに上場していたフォルティスの株式上場としての地位は、エイジーアスが引き継いでいます。

主要部門とその最終的な行方

フォルティスは、その解体プロセスの中で、以下の主要部門が異なる金融機関に引き継がれました。

フォルティス銀行ベルギー (Fortis Bank Belgium)：BNPパリバが買収し、後にBNPパリバ・フォルティス（現BNPパリバ・ベルギー）の一部となりました。
フォルティス銀行ルクセンブルク (Fortis Bank Luxembourg)：こちらもBNPパリバが買収しました。
フォルティス銀行オランダ (Fortis Bank Nederland)：オランダ政府によって国有化された後、ABNアムロ銀行と合併しました。
フォルティス・アセットマネジメント (Fortis Asset Management)：BNPパリバが買収し、BNPパリバ・フォルティス・アセットマネジメント（現BNPパリバ・アセット・マネジメントの一部）となりました。
* フィマゲン (Fimagest) および フォルティス・インベストメンツ (Fortis Investments)：これら資産運用関連部門も、BNPパリバによるアセットマネジメント部門買収の一部として統合されました。

現在の状況

これらの再編を経て、フォルティス・フィナンシャル・グループという企業組織自体は、現在では完全に清算され、消滅しています。その事業は、BNPパリバ、ABNアムロ銀行、アジアスといった後継の金融機関群に引き継がれ、それぞれの組織の中で運営されています。フォルティスは、欧州金融市場における大規模な合併と、世界金融危機による解体という、21世紀初頭の金融業界の激動を象徴する事例の一つとして記憶されています。

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