フォード・エスコート

フォード・エスコート：小型大衆車の歴史

1967年から2002年まで、フォードの欧州部門によって生産されたフォード・エスコートは、長きに渡り愛された小型大衆車です。その歴史は1950年代、フォード・アングリアのワゴン版にまで遡り、初代モデルであるMk1の登場で本格的な歴史が幕を開けました。

初代 Mk1（1968年 - 1974年）：FRレイアウトとスポーティモデルの登場

1967年末に英国でデビューしたMk1は、ラック・アンド・ピニオン式ステアリングや特徴的なスタイリングが魅力でした。フロントエンジン後輪駆動（FR）方式、リーフスプリングのサスペンションなど、基本的なメカニズムを採用しながらも、1100ccと1300ccの直列4気筒エンジンを搭載。スポーティな1300GTや、ロータス製1600ccDOHCエンジン搭載のツインカム、そしてコスワース製BDAエンジンを搭載したRS1600など、様々なバリエーションが展開されました。特にRS1600はラリーカーとして大活躍し、ハンヌ・ミッコラが1970年のロンドン-メキシコ・ワールドカップ・ラリーで優勝したことは有名です。この成功を記念して「メキシコ」モデルも販売されました。日本にも一部モデルが輸入されました。

2代目 Mk2（1975年 - 1980年）：角型スタイルとラリーでの活躍

1975年1月にデビューしたMk2は、先代より角張ったスタイリングが特徴でした。英独共同開発となり、基本的なメカニズムはMk1を踏襲しつつ、ボディバリエーションも豊富に展開されました。"L"、"GL"、スポーティな"スポーツ"、"メキシコ"、"RS2000"、小型高級車向けの「ギア」、そして廉価版の「ポピュラー」など、幅広いニーズに対応するモデルが用意されました。Mk1同様、商用向けのパネルバンも存在しました。Mk2もラリーで活躍し、コスワースBDAエンジンを搭載したRS1800は、2000cc 270馬力までチューンされ、RACラリーで連続優勝を達成するなど、その性能の高さを証明しました。

3代目 Mk3（1980年 - 1986年）：FFレイアウトと欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞

1980年9月にデビューしたMk3は、フォルクスワーゲン・ゴルフを意識したFFレイアウト、ハッチバックボディ、そしてSOHC式「CVH」エンジンを採用。1981年にはヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーにも輝きました。しかし、サスペンション設計が問題視され、1983年には改良が行われました。スポーティなXR3はVWゴルフGTIの対抗馬として人気を博し、XR3i、RS1600i、RSターボなどの派生モデルも登場。さらに、ディーゼルエンジン搭載モデルもラインナップに加わりました。3/5ドアハッチバック、3ドアワゴンに加え、後に5ドアワゴン、サルーン版オライオン、カブリオレも登場。ダイアナ元皇太子妃が使用していたことでも有名で、その車両は高額で落札されました。

4代目 Mk4（1986年 - 1990年）：Mk3のマイナーチェンジモデル

1986年に登場したMk4は、Mk3のマイナーチェンジモデルでした。スタイリングやインテリアの変更、ABSの標準装備化、エンジンの改良などが行われましたが、Mk3の課題は完全に解決には至りませんでした。

5代目 Mk5（1990年 - 1995年）：スタイリングと品質で不評も、RSコスワースで復活

1990年9月にデビューしたMk5はボディデザインを一新しましたが、スタイリングや品質面で不評を買いました。しかし、1991年に新設計Zetecエンジンを搭載したXR3iの再登場、そして150馬力のRS2000の登場で状況は好転。さらに、227馬力のエスコートRSコスワースが登場し、往年のスポーツイメージを取り戻しました。ブラジルではフォルクスワーゲンとの合弁会社がMk5をベースにした「ポインター」を生産していました。

6代目 Mk6（1995年 - 2002年）：最終モデル、34年の歴史に幕

1995年に最終モデルとなるMk6が登場。フェイスリフトによってフロントエンドやインテリアが変更され、乗り心地と操縦性の改善も図られました。2000年に乗用モデル、2002年に商用モデルの生産が終了し、34年に渡るエスコートの歴史に幕を閉じました。後継モデルはフォーカスです。

フォード・エスコートは、時代の変化と共に進化を遂げ、数々のモデルバリエーションとラリーでの成功、そしてダイアナ元皇太子妃との関わりなど、多くのエピソードを持つ魅力的な車でした。

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