フォード・エスコートRSコスワース

エスコートRSコスワース（Escort RS Cosworth）は、フォード・モーターが開発したスポーツカーであり、そのエンジン開発はコスワースが行いました。このモデルは、フォード・エスコートシリーズの4代目を基にしており、特に高いパフォーマンスを誇ります。

概要

この車両には、4輪駆動（4WD）仕様は設計に盛り込まれていませんでしたが、シエラ・サファイアRSコスワースの4WDシステムを組み込むことにより、優れた重量バランスを実現しました。エンジンは小型のエンジンルームに設置されているコスワースYBTエンジンで、排気量は1,993cc、直列4気筒の鋳鉄製ブロックを採用しています。これにDOHC4バルブヘッドおよびギャレット製の大径ターボチャージャーを組み合わせることで、最高出力227PS、最大トルク30.4kgmを発揮します。

サスペンションには、フロントにマクファーソン・ストラット、リアにはセミトレーリングアームが採用されています。当初はリアをマルチリンク式にする計画もありましたが、コストを理由にセミトレーリングアームに落ち着きました。

1992年に市販モデルがヨーロッパで発売され、仕様は豪華なラグジュアリーと競技用のスタンダードの2タイプがありました。ボディカラーは白、黒、赤に加えて、メタリック系の色味（紺、緑、灰）が用意され、スタンダード仕様は白のみが設定されていました。オプションとして2段スポイラーも選択可能でしたが、デザイナーのフランク・ステファンソンは当初3段スポイラーを望んでいたものの、コストの問題から中段を外した形となりました。後年、彼のスケッチを基に3段スポイラーが再現されるなど、デザインへの情熱が伺えます。

その後、エンジンや装備の改善が施されましたが、欧州連合の排出ガス規制に適応する事が難しくなり、1995年末で生産は終了しました。日本では正規輸入はされていなかったものの、1993年にトヨタからサファリラリーに参加した岩瀬晏弘が運営するオートスポーツイワセによって並行輸入されました。

WRCでの成果

世界ラリー選手権（WRC）では、デビューイヤーの1993年において舗装路と未舗装路の両方で安定したパフォーマンスを示し、特に舗装路では高い速さを見せつけました。しかし、翌年からはチーム運営の変化や開発の低下が影を落とし、1996年までの参戦期間中、7勝を収めるにとどまりました。

この年にはチーフエンジニアがジョン・ウィラーからフィリップ・ドゥナビンに交代し、その後はドライバーたちが求めるセッティングが実現されない事態が頻発しました。これにより、フォード・モータースポーツチームは「お役所体質」と批判されるようになり、マシン開発の停滞を招く要因となりました。特に有名なドライバーのミキ・ビアシオンやカルロス・サインツは、この運営スタイルに不満を抱いていました。

とはいえ、エスコートRSコスワースは、1980年代に低迷していたフォードを再びWRCの舞台で奮い立たせる役割も果たしました。このモデルはワークスチームだけでなく、多くのプライベーターにも愛用されるようになりました。特に1993年のラリー・サンレモでは、ワークス勢が不振の中、イタリア人ドライバーのジャン・フランコ・クニコが純プライベーターとしての勝利を上げました。また、1994年の1000湖ラリーではトミ・マキネンが、1995年のツール・ド・コルスではブルーノ・ティリーが好成績を収めるなど、このモデルの活躍は多くの話題を提供しました。

フォード・エスコートRSコスワースは、その性能と歴史から単なるスポーツカーを超えた存在として、今なお多くのファンに愛されています。

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