フォード・テルスター

フォード・テルスター：日米自動車技術提携が生んだ名車

フォード・テルスターは、フォードとマツダの資本提携という歴史的背景を持つ乗用車です。1979年の両社提携により、フォードはアジア・オセアニア・環太平洋地域向け小型車の開発・生産をマツダに委託。その成果として生まれたのがテルスターです。日本仕様車はマツダの工場で生産され、マツダ車のプラットフォームをベースに開発されました。

初代テルスター (GC系：1982年-1987年)

初代テルスターは、1982年にマツダの新しい販売網であるオートラマ店専売車として、フォード・レーザーと共にデビューしました。4代目マツダ・カペラをベースに、4ドアセダンと5ドアハッチバック（TX5）の2種類がラインナップ。搭載エンジンは1.6L、1.8L、2.0Lの直列4気筒ガソリンエンジンで、発売と同時にカペラと共に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高い評価を獲得しました。1983年には、TX5に2.0Lターボエンジン、セダンに2.0Lディーゼルエンジンが追加設定され、バリエーションを拡充しました。1985年にはマイナーチェンジを実施し、エンジン性能の向上を図っています。

2代目テルスター (GD/GV系：1987年-1997年)

1987年、フルモデルチェンジで登場した2代目テルスター。ボディ構成は初代を踏襲しつつ、エンジンラインナップは1.6Lと2.0Lターボガソリンエンジンが廃止され、2.0LガソリンエンジンはDOHC化されました。ディーゼルエンジンにはプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーが搭載されました。TX5には、当時先進技術であったフルタイム4WDと4輪操舵システム（4WS）が設定されました。特に4WDモデルは、初期型ではセンターデフロックスイッチを備えていましたが、マイナーチェンジを経てビスカスLSDに変更されています。2.0Lフルタイム4WD車はリアデフにもビスカスLSDが搭載されるなど、走破性にも配慮した設計となっています。1990年には、カペラカーゴを兄弟車とするワゴンモデルが追加。FF車は7人乗り、4WD車は5人乗りで、テルスターシリーズ初のミニバン的なモデルとして人気を博しました。1991年にはセダンとTX5の生産が終了。ワゴンは継続販売され、1997年まで販売されました。ワゴンモデルは、1994年のビッグマイナーチェンジで前後デザインを一新、インパネをカペラカーゴと共通化し、グリルガード付きの4WD専用グレード「カノーア」を追加。この「カノーア」は、クロスオーバーSUVの先駆けとして注目を集めました。1996年にはさらにマイナーチェンジを行い、「カノーアII」を追加設定しています。

3代目テルスター (GE系：1991年-1997年)

1991年10月、セダンとTX5はフルモデルチェンジを実施。マツダ・クロノスの姉妹車となり、TX5はカペラCG/アンフィニMS-6をベースとしています。全幅が拡大し3ナンバーサイズとなり、エンジンはFF車が1.8Lと2.0LのV6ガソリンエンジン、4WD車が2.0Lの直列4気筒ガソリンエンジンを搭載しました。CMソングにはシカゴの「素直になれなくて」が起用され、話題を呼びました。1992年には、FF車に2.5L V6ガソリンエンジン、セダンに2.0L 4WSディーゼルエンジンが追加設定され、1994年にはマイナーチェンジを受けています。

4代目テルスター (CG系：1994年-1997年)

1994年8月、カペラの姉妹車として5ナンバーサイズのセダンが登場。先代モデルと併売するため、「テルスターII」として販売されました。マツダ・クロノスからインパネを流用し、エンジンは直列4気筒の1.8Lと2.0Lガソリンエンジンの設定でした。

5代目テルスター (GF/GW系：1997年-2001年)

1997年8月、セダンがフルモデルチェンジを実施し、車名は再び「テルスター」に戻りました。エンジンは先代と同じ1.8Lと2.0Lの直列4気筒ガソリンエンジンを搭載。11月にはワゴンもフルモデルチェンジを実施し、ワゴンモデルには2.5L V6ガソリンエンジンが設定されました。また、先代のFF車に採用されていた7人乗りジャンプシートはオプション設定となりました。1998年には、2.0L直噴ディーゼルターボエンジンが追加されましたが、1999年にはセダン、2001年にはワゴンも生産・販売を終了しました。

車名「テルスター」の由来

車名のテルスターは、1962年にアメリカが打ち上げた人工衛星「テルスター衛星」に由来しています。

フォード・テルスターは、日米自動車メーカーの技術提携と、時代を反映した数々の革新技術を詰め込んだ、まさに時代の証人と言える一台です。様々なボディタイプやエンジンバリエーション、そして4WDや4WSといった先進装備は、当時の自動車技術の高さを物語っています。

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