フズリナ

フズリナ (紡錘虫)

フズリナ（学名: Fusulina）は、古生代（石炭紀からペルム紀）に約1億年間、特に温暖な海の底近くで栄えた絶滅原生動物の一群です。有孔虫という単細胞生物の仲間に分類され、「紡錘虫（ぼうすいちゅう）」とも呼ばれます。狭い意味では、Fusulina属に属するものを指すこともあります。

形態の進化と特徴

単細胞生物でありながら、フズリナはその進化の過程で驚くほど複雑な殻の形態を獲得しました。初期に出現した種類は比較的単純な円盤形をしていましたが、時代が進むにつれて球形へと変化し、最終的には紡錘形（両端が尖った繭のような形）が主流となりました。この紡錘形はフズリナの代表的な形態として知られていますが、長断面と短断面では見た目が大きく異なるため、観察する際には注意が必要です。また、サイズも進化と共に大型化し、最大で1センチメートルにも達する種も現れました。その体は石灰質の硬い殻で覆われており、これが化石として残る上で重要な役割を果たしました。

化石としての意義

フズリナは石灰質の殻を持つため、その化石は石灰岩の中から多数発見されます。日本国内では、山口県の秋吉台や岐阜県の金生山など、古生代の石灰岩が広く分布する地域で特に豊富に見つかります。

フズリナの化石は、地質学において非常に重要な役割を担っています。約1億年という比較的短い期間に多様な形態へと急速に進化し、かつ世界中の海に広く分布していたため、地層の年代を特定する上で示準化石として非常に有用です。特定の種類のフズリナの化石が見つかれば、その地層が形成された時代が古生代の石炭紀やペルム紀のいつ頃であるかを正確に知ることができます。

さらに、フズリナは古生代の終わりに突然姿を消した生物の一つです。この絶滅は、古生代から中生代への転換期に起こった大規模な生物の絶滅イベント、特にペルム紀末の大量絶滅（P-T境界事変）を示す重要な証拠として注目されています。フズリナの絶滅の様子を詳しく調べることは、過去の地球環境変動や生物絶滅の原因を理解する上で貴重な情報となります。

生息環境と命名

フズリナは主に温暖な気候の海の、比較的浅い海底付近で生活していたと考えられています。ただし、研究者の中には、一生のうちのある時期には海中を漂って生活していた可能性を指摘する声もあります。

学名である Fusulina は、ラテン語の「fusus」（紡錘）に、「-ulus」（小さいことを示す接尾辞）と「-ina」（生物名を示す接尾辞）を組み合わせたものです。これは「小さい紡錘形の生物」という意味であり、その代表的な形態に由来しています。和名である「紡錘虫」は、この学名の意味をそのまま日本語に訳したものです。

紡錘虫石灰岩

フズリナの化石を多量に含む石灰岩は、特に「紡錘虫石灰岩」と呼ばれます。これは、フズリナが当時の海で非常に繁栄し、死骸となった殻が大量に海底に堆積して石灰岩を形成したことを示しています。

フズリナの研究は、古生物学、地質学、そして地球史における大量絶滅のメカニズム解明において、現在も重要な位置を占めています。

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