金生山

金生山（きんしょうざん）

岐阜県大垣市赤坂町から揖斐郡池田町に跨る金生山は、伊吹山地の南東端に位置する標高217.1mの丘陵です。その地質は古生代ペルム紀の赤坂石灰岩で構成されており、かつては金生山、更紗山、愛宕山、月見山、花岡山などのピークが連なっていましたが、石灰石採掘により山の大部分が削り取られ、現在では明星輪寺のある南東部のみが残っています。

地質と化石

金生山は「日本の古生物学発祥の地」と呼ばれるほど、数多くの化石を産出することで知られています。特にフズリナの化石が多く、ペルム紀中期のネオシュワゲリナ科フズリナの研究は、この地が地質年代「赤坂世」の基準となるほどでした。かつてはペルム紀中期の国際標準模式地の一つとされていました。

山全体が石灰岩の産地であり、石灰岩や大理石の採掘が盛んに行われたため、山容は大きく変化しました。

歴史

古くは「赤坂山」と呼ばれ、関ヶ原の戦いの記録にもその名が見られます。金生山という山号は、686年建立とされる明星輪寺に由来し、赤鉄鉱の採掘や修験の山としての歴史が背景にあるとされています。明治時代になり、小字を付ける必要からピークの一つを金生山とし、やがて山全体の総称となりました。

環境

金生山は、かつて「伊吹県立自然公園」に指定されていましたが、現在は解除されています。しかし、固有種のアメイロヒルゲンドルフマイマイをはじめとする38種類の陸貝が生息しており、「金生山の陸貝と生息地」として岐阜県の天然記念物に指定されています。また、「金生山のヒメボタル」や「ユウスゲ自生地」も大垣市の天然記念物です。

地史

金生山の石灰岩は、約2億5000万〜2億7000万年前のペルム紀中～後期に、海洋プレート上でサンゴによって形成されたと考えられています。この地は、当時の海山にできたサンゴ礁の名残であり、ペルム紀末の大量絶滅の痕跡も残している可能性があります。その後、プレートの移動と地殻変動により隆起し、現在の形になりました。

19世紀末にドイツの古生物学者ギュンベルが金生山の化石を紹介したことから、世界的に知られるようになりました。ここでは、フズリナ、サンゴ、石灰藻、ウミユリ、巻貝、二枚貝などの化石が採取され、特にシカマイアという二枚貝やウミユリの化石は、世界一の大きさを誇ります。

金生山の特産種

金生山周辺には、以下のような陸貝の特産種が生息しています。

クロダアツクチムシオイガイ
オルサトギセル
アメイロヒルゲンドルフマイマイ
ヒルゲンドルフマイマイ
ナミマイマイ
ミカドギセル
ミノマイマイ

これらの種は、環境省や岐阜県のレッドリストに指定されているものもあり、貴重な生態系を形成しています。

鉱山・鉱脈

金生山は、良質な石灰岩や大理石の産地として、古くから採掘が行われてきました。江戸時代には大垣城の石垣にも利用され、美濃国赤坂の「美濃灰」は、江戸初期から左官用石灰として供給されていました。大正時代には、石灰石輸送のために鉄道が開通し、現在も複数の企業が採掘・加工を行っています。

また、かつては赤鉄鉱も採掘され、壬申の乱での武器供給や刀鍛冶の発展にも関わっていたとされています。

さらに、弥生時代後期の土器や平安時代の建築物には、金生山産のベンガラ顔料が使われていたことがわかっています。

地理

金生山は、池田山塊の南東端に位置し、西には伊吹山があります。東山麓には揖斐川の支流である杭瀬川が流れ、周辺には国道や県道が通っています。

かつては更紗山、愛宕山、月見山の3つのピークがありましたが、採掘により失われました。現在では、山頂に岩巣公園が整備され、濃尾平野を一望できます。

周辺

金生山周辺には、以下の施設があります。

岩巣公園
金生山神社
金生山化石館
金生山明星輪寺
大垣市立赤坂中学校
赤坂宿
お茶屋屋敷跡
* 昼飯大塚古墳

これらの施設は、金生山の歴史や文化、自然を学ぶ上で重要な拠点となっています。

金生山は、その地質学的価値、化石の豊富さ、固有の生態系、そして歴史的な背景から、非常に重要な場所です。石灰石採掘により景観が変化していますが、その文化的・学術的な価値は今もなお色褪せることはありません。

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