フタリシズカ

フタリシズカ（二人静）

フタリシズカ（学名: Chloranthus serratus）は、センリョウ科チャラン属に分類される多年草の一種です。その名の由来は、通常2本並んで立つ花穂の姿を、能の『二人静』に登場する静御前とその亡霊の舞姿に例えたことによります。

特徴

フタリシズカは、地下茎から直立する茎を伸ばし、高さは30cmから60cmほどになります。茎には、鋸歯を持つ2–3対の葉が対生します。上部の葉は大きく、楕円形から卵状楕円形をしており、光沢はありません。葉の縁には鋭い鋸歯があります。

• - 地下茎：横に這う、直径約3mm
• - 草丈：30–60cm
• - 葉：対生、上部の2-3対は大型の普通葉（5–17 × 2-8 cm）
• - 葉柄：0.5–1.5 cm
• - 葉身：楕円形〜卵状楕円形、無毛
• - 葉脈：羽状、側脈は6–8対

花

開花時期は4月から6月にかけてで、茎の頂点に穂状の花序をつけます。通常は1–2回分枝し、1–5本（多くは2本）の花序を形成します。花は小さく、花被を欠き、雌しべは白色の雄しべに包まれています。

• - 花期：4–6月
• - 花序：長さ 2–6 cm、ふつう1–2回分枝
• - 花：両性花、花被なし
• - 雄しべ：白色、3個が合着、雌しべを包む
• - 雌しべ：子房は卵形、柱頭は短い

また、夏には、茎の下部の鱗片葉の葉腋から閉鎖花をつけた花序を伸ばすことがあります。

果実

果実は6月から8月頃に実り、淡緑色の球形から倒広卵形をしています。大きさは2.5–3mm程度です。

• - 果期：6–8月
• - 果実：淡緑色、球形から倒広卵形、長さ 2.5–3 mm

分布と生育環境

フタリシズカは、南千島、北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島南部、中国中南部に分布しています。日本では、低山や丘陵地の林床に自生しています。

その他

フタリシズカは有毒植物ですが、中国では薬用としても利用されています。また、花には蜜腺がないため、アザミウマ類、ハナアブ類、甲虫類などが花粉を求めて訪れます。自家和合性を持つことも知られています。

品種

特に花序が多数に分岐するものは、品種エダウチフタリシズカ (Chloranthus serratus f. prosperus Honda) とされることがあります。

フタリシズカは、その繊細な姿と名前の由来となった能のイメージから、日本の文化に深く根ざした植物と言えるでしょう。

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