フッド (巡洋戦艦)

フッド (HMS Hood)の概要

フッド（HMS Hood）は、イギリス海軍が第一次世界大戦後に建造した巡洋戦艦で、アドミラル級（フッド級）に属します。艦名は、海軍の歴史的提督であるサミュエル・フッド提督に由来しています。この艦は、現代における高速戦艦の先駆けとされ、当時は世界最大かつ最速の軍艦として、多くの注目を集めました。特に、その壮大な姿は大英帝国の象徴でもあり、大いに誇りにされていました。

フッドは、基準排水量約42,000トン、速力31ノットを発揮し、38.1センチ連装砲塔を4基装備しているなど、強力な武装を誇りました。歴史家オスカー・パークスは、フッドの美しさを「軍艦美の極致」と称し、国民からは「マイティ・フッド」と親しまれました。しかしその高性能が逆に、近代化改装の必要性を後回しにさせてしまい、その結果として後の喪失につながったのです。

建造と設計の背景

イギリス海軍は、装甲巡洋艦からの移行を考慮し、「速力すなわち防御力」という新しい設計理念に基づき、フッドを建造しました。その設計は、重兵装、高速力、そして軽防禦を備えたものでした。1915年、ドイツ帝国海軍が新型の巡洋戦艦を計画していることが伝わり、イギリス海軍はその対抗策として新型巡洋戦艦の必要性を痛感しました。

フッドは当初、クイーン・エリザベス級戦艦に基づく改良デザインから始まりましたが、設計の進行中に実戦での戦２の結果から、大きな防御力強化が求められることになりました。そして1916年9月に設計の見直しが行われ、結果、完成したフッドは現代軍艦としての性能を一層高めることとなりました。

艦容と武装

フッドの艦形は、伝統的なイギリス巡洋戦艦のスタイルを守りつつ、高速航行を可能にするために先進的なバルバス・バウ（球状艦首）を採用しました。艦橋と主砲塔のデザインも称賛を受け、測距儀と指揮所が組み合わさった独特のフォルムを形成しています。

主武装は38.1センチ砲を4基備えており、あらゆる近距離戦闘において優位性を発揮しました。副砲として14センチ速射砲が12基、対空砲火力も充実しており、多様な状況に対応できる設計でした。

第二次世界大戦と沈没

1941年5月24日、フッドはデンマーク海峡でビスマルクと遭遇し、激しい戦闘が展開されました。この戦闘中、フッドはビスマルクの砲撃を受け、瞬時に沈没してしまいました。フッドの沈没は1,419人の乗員のうち、わずか3人だけが救助されるという惨事となりました。この轟沈はイギリス海軍と国民に大きな衝撃を与え、フッドの存在は大英帝国の象徴であり続けました。

フッドの喪失は、戦後の艦船設計に影響を与え、海軍の戦略にも変化をもたらしました。それ以降、巡洋戦艦の役割は見直され、戦艦の設計も大きく進化していくことになります。

フッドは単なる軍艦を越えて、愛国心の象徴として人々の記憶に刻まれました。その存在と轟沈の歴史は、イギリス海軍の誇りと悲劇を同時に象徴するものです。

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