堀口宏

堀口 宏（ほりぐち ひろし）は、1928年5月30日に栃木県真岡市で生まれた日本のプロボクサーです。不世出の強打者として名を馳せたピストン堀口を実兄に持ち、自身もまた日本ボクシング史に名を刻むバンタム級の偉大な王者として活躍しました。そのキャリアは戦後間もない激動の時代と重なり、幾度もの王座の獲得と陥落、そして再び奪回を繰り返す波乱に満ちたものでした。

堀口宏のプロボクサーとしての第一歩は、1943年9月19日に対戦した小関隆戦でした。このデビュー戦は判定による敗北となりました。

キャリアを積み重ねた堀口は、戦後のボクシング界でその実力を発揮し始めます。1947年8月29日、秋村竜三との日本バンタム級王座決定戦に臨み、6ラウンドTKO勝利を収めて念願の王座を獲得しました。しかし、この王座は長くは続きませんでした。翌1948年1月16日、花田陽一郎とのタイトルマッチで10ラウンド判定負けを喫し、わずか数ヶ月で王座から陥落してしまいます。

王座を失った堀口でしたが、すぐに巻き返しを図ります。1948年4月11日、再び花田陽一郎と対戦。前回の雪辱を果たすべく挑んだこの試合で、10ラウンド判定による勝利をもぎ取り、日本バンタム級王座を見事奪回しました。2度目の王座獲得を果たした堀口は、その後3度にわたって防衛を成功させ、安定した強さを見せつけました。

しかし、強豪ひしめくバンタム級戦線で再び試練が訪れます。日本のボクシング史に名を残す天才、白井義男との対戦です。1949年12月15日、白井義男とのタイトルマッチに臨みましたが、10ラウンド判定で敗れ、王座を白井に明け渡すこととなりました。

その後、堀口は王座返り咲きを目指す傍ら、階級を上げての挑戦も行いました。1951年12月25日には、後藤秀夫が保持する日本フェザー級王座に挑戦しましたが、この試合も10ラウンド判定負けに終わりました。さらに、かつて王座を奪われた白井義男が保持する日本バンタム級王座への挑戦も行いましたが、1952年2月9日に行われたこの試合でも10ラウンド判定負けを喫し、王座奪回はなりませんでした。

度重なる王座奪回失敗の後、堀口は再び日本バンタム級の頂点を目指します。1952年9月23日、中西清明との対戦で10ラウンド判定勝利を収め、自身3度目となる日本バンタム級王座獲得を成し遂げました。この3度目の王座獲得後、堀口は安定した強さを発揮し、実に8度にわたる防衛に成功。長期政権を築き上げ、自身のキャリアにおける最盛期を迎えました。

また、日本国内だけでなく、アジアの舞台でも戦いました。1952年10月18日には、フィリピンの強豪フラッシュ・エロルデと初代東洋バンタム級王座を争う試合を行いましたが、12ラウンド判定で敗れ、東洋王座獲得はなりませんでした。

プロボクサーとして長きにわたりリングに立ち続けた堀口宏は、1954年7月27日、保持していた日本バンタム級王座を返上し、現役を引退しました。

そのプロキャリアは、101戦82勝（24KO）11敗6分2無効試合という驚異的な戦績を残しました。これは、戦後日本のボクシング黎明期において、超人的なタフネスと卓越したボクシング技術、そして決して諦めない精神力がなければ達成しえない数字と言えるでしょう。

堀口宏のボクシング人生は、日本バンタム級王座を巡る花田陽一郎や白井義男といったライバルたちとの激闘、そして幾度も訪れたキャリアの浮沈が特徴的です。その戦績と、兄ピストン堀口と共に日本ボクシング界に残した功績は、今なお多くの人々に記憶されています。

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