フラワーズ (アルバム)

ローリング・ストーンズの編集盤アルバム『フラワーズ』(Flowers)は、1967年発表の米国向け作品です。単なるコンセプトアルバムではなく、既存曲と未発表曲を織り交ぜたベスト盤的な性格を持っています。全12曲中、米国では7曲（全世界では3曲）が未発表曲という構成で、幅広いストーンズの音楽性を聴くことができます。特に注目すべきは、テンプテーションズのヒット曲「マイ・ガール」のカヴァーが収録されている点です。

このアルバムの企画背景には、1967年当時のアメリカにおける音楽ムーブメントの影響が強く見られます。特に、モンタレー・ポップ・フェスティバルを共催し、フラワー・ムーブメントの中心人物として活躍したルー・アドラー(Lou Adler)の関与が指摘されています。レコードには「Lou-in Adler」とクレジットされており、彼独特のサウンド・クリエイションがこのアルバムに反映されていると考えられます。彼はママス&パパスやバリー・マクガイア、P・F・スローンといったアーティストとも関係が深く、時代の潮流を反映した作品と言えるでしょう。

アルバム・ジャケットのデザインも特徴的です。写真撮影はガイ・ウェヴスター、グラフィックはトム・ウィルクス、デザインは"The Corporate Head"と、複数の才能が結集しています。5人のメンバーの顔が花で表現されているのですが、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ、ビル・ワイマンの4人には花が、ブライアン・ジョーンズには葉だけが描かれているという、独特の演出がなされています。このデザインには、メンバー間の関係性や、アルバムのコンセプトを象徴的に表現しようとした意図が読み取れます。

当初はイギリスでもDeccaレーベルからSK4888として、もしくは輸入盤としてリリースされる予定でしたが、実現には至りませんでした。しかし、米国では大きな成功を収め、TOP LP'sチャートで8月26日付でミリオンセラーを記録するなど、商業的にも大きな成功を収めています。このアルバムは、ローリング・ストーンズの音楽的広がりと、60年代後半のアメリカ音楽シーンを理解する上で重要な作品となっています。収録曲は、代表曲である「ルビー・チューズデイ」や「夜をぶっとばせ」をはじめ、彼等の多彩な音楽性を示す楽曲が選曲されており、当時を知る世代だけでなく、現代のリスナーにとっても新鮮な魅力を持つアルバムです。

収録曲は以下の通りです。

SIDE A
1. ルビー・チューズデイ (Ruby Tuesday)
2. マザー・イン・シャドウ (Have You Seen Your Mother, Baby, Standing In The Shadow)
3. 夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together)
4. レディ・ジェーン (Lady Jane)
5. アウト・オブ・タイム (Out Of Time)
6. マイ・ガール (My Girl)

SIDE B
1. バックストリート・ガール (Backstreet Girl)
2. プリーズ・ゴー・ホーム (Please Go Home)
3. マザーズ・リトル・ヘルパー (Mother's Little Helper)
4. テイク・イット・オア・リーヴ・イット (Take It Or Leave It)
5. ライド・オン・ベイビー (Ride On, Baby)
6. シッティン・オン・ア・フェンス (Sittin' On A Fence)

『フラワーズ』は、単なる編集盤以上の意味を持つ、ローリング・ストーンズの歴史において重要な位置を占めるアルバムと言えるでしょう。

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