フランク・モーリー

フランク・モーリー

フランク・モーリー（Frank Morley、1860年9月9日 - 1937年10月17日）は、代数学と幾何学の分野で活躍したイギリス生まれの数学者です。キャリアの大半をアメリカ合衆国で過ごし、特に三角形に関する「モーリーの定理」の発見者として広く知られています。彼は教育者としても優れ、多くのアメリカ人数学者を育成することで、同国の数学の地位向上に大きく貢献しました。

生涯と教育

モーリーは1860年、イングランド東部サフォーク州のウッドブリッジで誕生しました。父ジョセフ・ロバーツ・モーリーはクエーカー教徒で磁器店を経営しており、母はエリザベス・マスケットでした。地元のウッドブリッジスクールで学んだ後、ケンブリッジ大学キングス・カレッジに進学し、1884年に学士号を取得しました。

アメリカでの学術活動

1887年、モーリーはペンシルベニア州へと渡り、ハバフォード大学で教え始めました。その後、1900年までの13年間、同大学で教育活動に従事しました。1900年には、メリーランド州のジョンズ・ホプキンズ大学数学科の主任教授に招聘され、この要職を長きにわたって務めました。この大学で、彼は50人以上の博士課程学生を指導しており、その中には後に著名な数学者となるクララ・ラティマー・ベーコンのような人物も含まれていました。当時のアメリカにおける数学は発展途上にありましたが、モーリーのような優れた研究者兼教育者の尽力により、その水準は飛躍的に向上しました。

主要な業績と出版物

フランク・モーリーの研究は、代数学と幾何学の幅広い分野に及びます。特に、いかなる三角形においても、その内角の三等分線が隣り合う線同士で作る交点は正三角形をなす、という「モーリーの定理」は彼の名を不朽のものとしました。この定理は、その単純な記述に反して証明が容易ではないことから、多くの数学者の興味を引きました。

彼の主要な出版物としては、ジェームズ・ハークネスとの共著によるものが挙げられます。1893年には『Elementary Treatise on the Theory of Functions』を、1898年には『Introduction to the Theory of Analytic Functions』を刊行しました。また、晩年の1933年には、数学者となった息子フランク・ヴィガー・モーリーと共に『Inversive Geometry（反転幾何学）』という著書を出版しました。この本では、複素数を幾何学的ツールとして応用する手法を探求し、「base-circle」（単位円）や「turn」（単位円上の点）といった独自の用語を用いるなど、意欲的な内容を含んでいます。

その他の論文としては、1919年のリューロー四次曲線に関する研究などがあります。

学会での貢献と影響力

モーリーはアメリカの学術界において非常に活発な役割を果たしました。1897年にはアメリカ哲学協会の会員に、1917年にはアメリカ芸術科学アカデミーの会員に選出されました。特に、アメリカ数学会の発展に大きく貢献し、1919年から1920年にかけては同学会の会長を務めました。また、1900年から1921年まで、数学分野の権威ある学術誌である『American Journal of Mathematics』の編集長を長年にわたり務め、研究成果の発信にも重要な役割を果たしました。さらに、国際数学者会議にもしばしば招かれ、1912年のケンブリッジ大会、1924年のトロント大会、1936年のオスロ大会で招待講演を行っています。

人物と家族

数学以外の分野でも、フランク・モーリーは才能を発揮しました。彼は熟練したチェスプレイヤーでもあり、かつて世界チャンピオンであったエマーヌエール・ラスカーを打ち負かした逸話も残っています。

モーリーはメリーランド州ボルチモアで77歳の生涯を閉じました。彼には3人の息子がおり、それぞれ異なる分野で成功を収めました。長男クリストファー・モーリーは有名な小説家、次男フェリックス・モーリーは大学長、そして三男フランク・ヴィガー・モーリーは父と同じく数学者となりました。

フランク・モーリーは、その独創的な研究、優れた教育、そして学会でのリーダーシップを通じて、アメリカの数学が世界的な地位を確立する上で極めて重要な役割を担った人物として記憶されています。

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