フランク・ロレンツォ

フランク・ロレンツォは、1940年生まれのアメリカの実業家で、規制緩和が進むアメリカ航空業界において、その名を轟かせた人物です。彼は、航空業界に新しいビジネスモデルを導入し、その歴史に大きな足跡を残しました。

生い立ちとキャリア初期

ニューヨークのクイーンズで、イタリア系スペイン移民の子として生まれたロレンツォは、コロンビア大学を卒業後、ハーバード大学大学院で経営学修士号（MBA）を取得しました。卒業後はトランス・ワールド航空（TWA）とイースタン航空で財務アナリストとしてキャリアをスタートさせました。1966年には、大学時代の友人ロバート・J・カーニーと共同で、航空会社向けのアドバイザリー会社「ロレンツォ・カーニー・カンパニー」を設立し、斬新なマネジメント手法を提供しました。さらに1969年には航空機リース会社「ジェット・キャピタル・コーポレーション」を設立し、航空ビジネスでの足場を固めていきました。

規制緩和と航空会社の再建

1972年、ロレンツォは経営難に陥っていたテキサス・インターナショナル航空を買収し、経営再建に乗り出します。彼の再建策は、従業員の賃金カットやコスト削減を徹底するもので、その後の彼の航空会社再建の基本方針となりました。不採算路線の撤退や旧型機の売却などのリストラを実施し、1976年には黒字化を達成しました。1977年には、閑散期の路線で大幅な割引運賃「ピーナッツ・フェア」を導入し、大きな成功を収めました。1978年の航空自由化政策を受けて、ロレンツォはナショナル航空の買収に動きましたが、パンアメリカン航空（パンナム）との競合の末に買収は失敗したものの、株式売却により巨額の利益を得ました。

買収と強硬な再建策

1980年代に入ると、ロレンツォは持ち株会社「テキサス・エア・コーポレーション」を設立。さらに新規航空会社ニューヨーク・エアを設立し、イースタン航空が運航していたニューヨーク - ワシントンD.C.間のシャトル便市場に参入しました。1981年には、経営が悪化していたコンチネンタル航空を買収します。買収後、ロレンツォは連邦倒産法第11章（チャプター11）を適用し、コンチネンタル航空を一旦破産させ、全従業員を解雇。その後、賃金カットを受け入れた従業員のみを再雇用するという強硬な手段を取りました。この強引な再建策は、航空業界に大きな衝撃を与えましたが、従業員からの反発は非常に強いものでした。

1985年には、再びTWAの買収を試みますが、労働組合の激しい抵抗に遭い失敗。同時期にはフロンティア航空の買収も試みましたが、フロンティア航空側がロレンツォの買収を拒否し、別の航空会社に買収されることになりました。1986年、ロレンツォは低運賃航空会社として再建するためイースタン航空を買収しますが、これも労使対立から再建は難航。1989年にはイースタン航空はチャプター11を適用し、最終的にロレンツォは同社の経営から手を引くことになりました。1990年、ロレンツォは「テキサス・エア・コーポレーション」を売却し、航空業界の第一線から退きました。

その後

1990年以降は、Savoy Capital社の社長として、資産管理や民間投資、ベンチャーキャピタルなどに携わっています。

フランク・ロレンツォの経営手法は、大胆で時に強引なものでしたが、規制緩和という時代の波に乗り、アメリカ航空業界の再編に大きな影響を与えたことは間違いありません。彼の功績と同時に、労働組合との激しい対立も、その名を語る上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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