ナショナル航空

ナショナル航空：太陽の翼、その興亡

ナショナル航空は、1934年から1980年までアメリカ合衆国で運航していた航空会社です。その歴史は、1929年にジョージ・T・ベイカーが買収した小さなチャーター機会社から始まりました。

設立から中堅航空会社へ

当初は2機のライアン・モノプレーンで、禁酒法時代にカナダへの酒類輸送を担っていました。1934年には郵便輸送にも参入し、路線を拡大。1944年にはイースタン航空を抑え、ジャクソンビル - ニューヨーク間の路線を開設しました。その後、フロリダ州に拠点を移し、キューバへも路線を広げました。

1950年代には、デルタ航空やノースウエスト航空などの大手との競争に苦しむも、パックツアーの企画や夜行便の運航などで対抗しました。1970年にはDC-8でマイアミ - ロンドン間の長距離国際線を開設し、ボーイング747やDC-10といった大型機も導入しました。これにより、ナショナル航空はアメリカの中堅航空会社としての地位を確立しましたが、大手航空会社に比べると市場での基盤は弱いものでした。

パンアメリカン航空との合併、そして終焉

1978年からの航空規制緩和を受け、ナショナル航空はフランクフルトやアムステルダムへも路線を拡大しました。買収による規模拡大を試みるも成功せず、ノースウエスト航空やテキサス・エアなどの買収合戦の末、最終的にパンアメリカン航空（パンナム）に買収されました。当時、パンナムは国際線に強みを持っていたものの、国内線は弱かったため、ナショナル航空の買収によって国内線の強化を図りました。しかし、1980年10月26日、ナショナル航空はパンアメリカン航空に吸収合併され、その歴史に幕を閉じました。

合併後の影響

パンナムはナショナル航空を買収したものの、路線網の相性や旧ナショナル航空社員の人件費増加などにより、経営状態が悪化しました。1988年のパンアメリカン航空103便爆破事件（ロッカビー事件）が致命傷となり、1991年にパンナムは倒産。ナショナル航空の買収は、パンナムにとって大きな失敗となりました。

ナショナル航空の名称は、その後も何度か別の航空会社に使われましたが、いずれも短期間で倒産。現在では、ミシガン州のチャーター便会社が「ナショナル・エアラインズ」の名称を使用しています。また、ナショナル航空が使用していた太陽のマークは、かつてサウスイースト航空で使用されていました。

運行していた主な機材

ナショナル航空は、以下の様々な航空機を運用していました。ボーイング機の顧客コードは「35」でした。

コンベア340
コンベア440
C-46
DC-4
DC-6
DC-7
ロッキード L-18 ロードスター
ロッキード・スーパーコンステレーション
ロッキード L-188 エレクトラ
DC-8
ボーイング727
ボーイング747
DC-10

主な事故

ナショナル航空では、以下の重大な事故が発生しました。

ナショナル航空193便着水事故
ナショナル航空967便墜落事故
ナショナル航空27便エンジン破損事故

参考文献

賀集章『消えたエアライン』（2003年　山海堂）
高橋文子『消滅―空の帝国「パンナム」の興亡』（1996年　講談社）

ナショナル航空は、「サンキング」の愛称で親しまれた太陽のマークとともに、アメリカ航空史の一ページを飾る航空会社として記憶されています。

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