フランシスコ・エルナンデス・デ・トレド

フランシスコ・エルナンデス・デ・トレドの略歴と業績

フランシスコ・エルナンデス・デ・トレド（1514年 - 1587年1月28日）は、スペインの著名な博物学者であり、王室の侍医として知られています。彼は新大陸の薬用植物に関する科学研究を行った最初の学者の一人であり、その業績は後の医学や植物学に大きな影響を与えました。

生い立ちと学問

エルナンデスはトレド県のラ・プエブラ・デ・モンタルバンで生まれ、アルカラ大学にて医学と植物学を学びました。彼は医師としての技能を磨くためにスペイン各地を旅し、多くの患者を治療しました。特にグアダルーペの修道院とトレドのメンドーサ病院での仕事が評価され、薬用植物の研究によって名を馳せました。古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスの著作を翻訳し、人体解剖の所見を加筆したことでもその才能が発揮されました。

1567年にスペイン王フェリペ2世の侍医に任命され、以降彼の活動は一層広がることとなります。

新大陸での探査

1570年、エルナンデスは新大陸に渡り、薬用植物と動物に関する調査を行うよう命じられました。この探査は歴史的に重要なものであり、科学的探求の目的を持った最初の新大陸の探査とされています。彼は息子のフアンと共にメキシコに上陸し、現地の植物や動物を詳細に観察し、先住民の医療知識についても深く聴き取ることに努めました。彼は現地の画家に図版を描かせ、資料の視覚化を図りました。

エルナンデスが遭遇した1576年の疫病では、アズテク族の人口が激減し、彼はナワトル語で「cocoliztli」と呼ばれる恐ろしい病状を正確に記述することができました。この疫病は、げっ歯類から媒介される出血熱であったとされ、厳しい干ばつの影響もあったことが近年の研究で示されています。

植物学的記録

エルナンデスは新大陸で3000以上の植物についての詳細な記録を残し、現地の名を基にした分類法を用いました。特に、バニラ、トウモロコシ、カカオ、タバコ、トウガラシ、トマト、サボテンなど多様な植物について詳細に記述し、当時のヨーロッパの植物命名法での分類には挑戦しました。

エルナンデスが12巻にわたるラテン語の著作を執筆し、メキシコの先住民族の地理的分布や彼らの習慣についても考察を加えました。これらの著作は王への献呈として特別に出版されましたが、実際にはスペイン国内での出版は許可されず、エル・エスコリアルの図書館に保存されることとなります。

著作の影響

エルナンデスの著作の初版は1571年に出版され、その後も彼の研究成果は広まりました。1671年に図書館火災で多くの資料が失われ、1680年には新たに編集され出版されます。彼の業績は時代を超えて影響を残し、特にイタリアの科学者たちによって再評価されました。

まとめ

フランシスコ・エルナンデス・デ・トレドは、新世界の植物や動物に関する先駆的な研究を行い、その記録は近代植物学の重要な基礎を築きました。彼の貴重な記録は後の世に広く影響を与え、今日でも彼の名は植物学において知名度を持ち続けています。

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