フランシス・コーツ

フランシス・コーツ（Francis Cotes RA、1726年5月20日 – 1770年7月16日）は、18世紀のイギリスにおいて、肖像画家として名を馳せた人物です。当時のイギリス社会で非常に人気が高く、多くの人々を描きました。

生い立ちと初期の活動

コーツはロンドンで薬剤師の息子として生まれました。弟のサミュエル・コーツ(Samuel Cotes: 1734–1818)もまた、ミニアチュール画家として活躍しました。フランシスは、肖像画家のジョージ・ナップトン(George Knapton: 1698–1778)から絵画の指導を受け、父親の薬局で働きながら画業をスタートさせました。薬剤師である父親から受け継いだ薬の調合技術は、後にパステル絵具を自ら調合する上で大いに役立ったと言われています。

パステル画への傾倒と油絵への展開

コーツは、18世紀初頭に国際的な名声を確立した肖像画家、ロザルバ・カッリエーラのパステル画に感銘を受け、当初はパステル画を熱心に研究しました。より大きな作品を制作するため、後に油絵も手掛けるようになりましたが、その後もパステル画の制作を続けました。1760年代にコーツの油絵肖像画が人気を博した際にも、そのスタイルはパステル画のような淡い色彩が特徴的でした。

同時代の画家たちとの競争と成功

コーツの肖像画は、アラン・ラムゼー(1713–1784)や[ジョシュア・レノルズ]といった、著名な画家たちと人気を競い合うほどでした。1763年には、ロンドンに大きな屋敷を購入できるほど、画家として成功を収めました。1740年代後半頃から、コーツの肖像画における衣装は、専門の画家であったピーター・トムズ(Peter Toms)が担当していました。また、コーツの作品の中には、版画として出版されたものも存在します。

芸術家協会への貢献とロイヤル・アカデミー創立

ジョシュア・レノルズやフランシス・ヘイマンらと共に、1760年代初頭にイギリス芸術家協会(Society of Artists of Great Britain)を設立し、1765年には会長に就任しました。この協会が母体となり、1768年にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツが設立されると、コーツは創立メンバーの一人に選ばれました。しかし、その2年後の1770年、44歳という若さでリッチモンドにて亡くなりました。

後世への影響

コーツは、パステルの技法をジョン・ラッセル(John Russell: 1745-1806)に伝授しました。ラッセルらは1772年に「Elements of Painting with Crayon」を出版し、コーツから学んだ技法を紹介しました。彼の教えは、後世の画家たちに大きな影響を与えたと言えるでしょう。

コーツの作品は、現在も多くの美術館に所蔵されており、その卓越した技術と芸術性は高く評価されています。

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