フランシス・ヘイマン

フランシス・ヘイマン

フランシス・ヘイマン（Francis Hayman RA, 1708年 - 1776年2月2日没）は、18世紀のイギリスで重要な役割を果たした画家であり、また優れたイラストレーターとしても知られています。彼は後のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ設立に深く関わり、その創立メンバーの一人に名を連ねました。

経歴

デヴォン州エクセターに生まれたヘイマンは、芸術の世界に足を踏み入れた初期段階で、ロンドンのドルリー・レーン劇場で舞台美術家として働きました。この時期、彼は俳優としてわずかな役柄もこなした経験があります。その後、彼はセント・マーティンズ・レーンに自身の工房を構え、本格的に画家としての活動を開始しました。

彼の画家としての評価を高めたのは、当時のロンドンで人気の娯楽施設であったヴォクスホール・ガーデンズにおける仕事でした。彼は園内の売店の装飾を手掛け、これにより多くの人々にその名を知られるようになります。同時に、肖像画や歴史的な題材を描いた作品も制作し、多方面で才能を発揮しました。

挿絵画家としての功績

ヘイマンは特に挿絵画家として顕著な業績を残しています。1740年にトマス・ハンマー卿が編集した『シェイクスピア全集』では、実に31点もの挿絵を担当しました。これらの挿絵の中には、リチャード三世を演じるデイヴィッド・ギャリックのような、同時代の著名な俳優がシェイクスピア劇を演じている様子を描いたものも含まれており、演劇史の資料としても価値があります。

さらに、彼は当時の人気作家の作品の挿絵も数多く手掛けました。サミュエル・リチャードソンのベストセラー小説『パミラ、あるいは淑徳の報い』や、ジョン・ミルトンの壮大な叙事詩『失楽園』およびその続編『復楽園』、そしてトバイアス・スモレットによる翻訳版『ドン・キホーテ』といった文学史上の重要作品に、彼の描いた挿絵が添えられました。

ヴォクスホール・ガーデンズの所有者となったジョナサン・タイヤーズからの依頼により、ヘイマンは園内に展示するための大型絵画も制作しました。これらの作品はイングランドの歴史をテーマとしており、観る者に愛国心を鼓舞するような意図が込められていたと考えられます。

教育者および影響力

ヘイマンの功績は自身の制作活動に留まりませんでした。彼は教育者としても優れており、数多くの後進の画家を育てました。彼の工房からは、メーソン・チェンバーリン、ナサニエル・ダンス＝ホランド、ジョン・トーマス・シートン、レミュエル・フランシス・アボットといった、後に名を成す画家たちが輩出されています。

また、彼はイギリスを代表する風景画家であるトマス・ゲインズバラにも強い影響を与えたことが知られています。ゲインズバラが初期に描いた人物画や風景画には、ヘイマンの様式からの影響が見て取れます。

ロイヤル・アカデミー設立への貢献

1760年代初頭、ヘイマンはジョシュア・レノルズらと共に、イギリス芸術家協会（Society of Artists of Great Britain）の設立に尽力しました。この組織が発展し、1768年にはイギリス美術界の中心となるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツが創立されます。ヘイマンはその創立メンバーとして名を連ねるとともに、アカデミーの初代司書という要職を務め、その運営に貢献しました。

フランシス・ヘイマンは、ヴォクスホール・ガーデンズでの大衆向けの作品から、権威ある文学作品の挿絵、そして将来の芸術家たちの育成に至るまで、多岐にわたる活動を通じて18世紀イギリスの美術界に確固たる足跡を残しました。

もう一度検索