フランス次期空母

フランス次期空母PA2計画：幻の7万トン級空母

フランス海軍は、2000年代初頭より老朽化した空母の代替として次期空母PA2（Porte-Avions 2、航空母艦2）の建造計画を進めていました。本計画は、イギリス海軍のクイーン・エリザベス級空母を原型とし、フランスの防衛産業であるタレス・ネーバル・フランス社とDCN社（後のNaval Group）が中心となって開発を進めました。

計画の背景：シャルル・ド・ゴール級の後継

フランス海軍は、過去にクレマンソー級空母を運用していましたが、1980年代には代替艦の必要性に迫られていました。そこで建造されたのが原子力空母シャルル・ド・ゴールです。しかし、シャルル・ド・ゴールは、建造過程における様々な問題を抱え、完全な運用開始まで時間を要しました。この経験から、フランス海軍は同型艦の建造に二の足を踏むこととなり、より信頼性の高い設計を採用することが求められました。

そこで着目されたのが、イギリス海軍が開発を進めていたクイーン・エリザベス級空母です。英仏両国は、2006年に将来の空母設計に関して協力することで合意し、フランスはイギリスの設計情報を導入することになりました。フランスは、イギリスの設計への投資に見合うコストを支払うことで、クイーン・エリザベス級空母の設計データを活用し、PA2の設計に反映させる計画でした。2008年度のフランス国防予算には、PA2の建造費用が含まれていました。

PA2の計画概要：7万トン級通常動力空母

PA2は、排水量70,000～75,000トン、全長283メートルの大型空母として計画されました。トゥーロンを母港とし、シャルル・ド・ゴールを補完する役割を担う予定でした。搭載機としては、ラファールM艦上戦闘機、E-2C早期警戒機、NFH90ヘリコプターなどが想定され、カタパルト射出とアレスティング・ワイヤーを用いたCATOBAR方式を採用する計画でした。

搭載機数は、クイーン・エリザベス級よりも少ない32機のラファールM戦闘機、3機のE-2C早期警戒機、5機のNFH90ヘリコプターとされていました。これは、兵員輸送のためのスペースを確保したためです。必要に応じて、短期間で艦載機搭載スペースを改修することも可能でした。

また、高度な自動化システムの導入により、乗員数をシャルル・ド・ゴールの約1,950名から約1,650名に削減する計画でした。推進システムは、ロールス・ロイス製MT30ガスタービンエンジンを中心とする統合電気推進（IFEP）を採用し、航続距離は10,000海里（約19,000キロメートル）を確保する計画でした。

建造は、サン・ナゼールにあるChantiers de l'Atlantique社が行い、艤装はブレストのDCN社で行う予定でした。

艦名については、「リシュリュー」という名称が候補に挙がっていましたが、計画中止によって決定されることはありませんでした。

計画の中止とその後

PA2計画は、2013年にフランス政府によって中止されました。財政的な問題や、シャルル・ド・ゴールの近代化改修との兼ね合いなどが中止の理由として挙げられています。計画中止後、フランス海軍は、新たな次期空母として電磁式カタパルト搭載の原子力空母PANG（Porte-Avions de Nouvelle Génération）計画を発表しました。PANG計画では、より近代的な技術を採用し、次世代空母建造へ向けて新たな一歩を踏み出しました。PA2計画は実現しませんでしたが、その技術的検討や経験は、後のPANG計画に活かされたものと考えられます。

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