フランソワ (ギーズ公)

フランソワ・ド・ロレーヌ：激動の時代を駆け抜けたギーズ公

フランソワ・ド・ロレーヌ（1519年2月17日 - 1563年2月24日）は、ギーズ公として知られるフランスの貴族であり、軍人です。その武勇から「バラフレ（傷跡のある）」という渾名で呼ばれました。彼は、ユグノー戦争という宗教対立の時代に、カトリック陣営の重要なリーダーとして活躍しましたが、最終的にはプロテスタントによって暗殺されるという劇的な最期を遂げました。

生涯

1519年、フランソワはギーズ公クロードとアントワネット・ド・ブルボンの間に生まれました。1545年、ブローニュ包囲戦で負傷し、この時の傷が彼の渾名の由来となりました。1552年には、神聖ローマ皇帝カール5世によるメス包囲を巧みな防衛で退け、その名を高めました。しかし、1554年のレンティの戦いでは帝国軍に敗北を喫しました。

着実にその地位を向上させていったフランソワは、1557年に教皇パウルス4世を支援するためにイタリアへ遠征します。しかし、すぐにフランスへ呼び戻され、1558年には、イングランドの支配下にあったカレーを200年ぶりに奪還するという大功を立てました。

1559年、フランソワ2世が即位すると、フランソワは権勢の絶頂期を迎えます。王妃マリー・ステュアートが彼の姪であったことから、ギーズ家は王家と緊密な関係を築き、政治の中枢を担うことになったのです。弟であるロレーヌ枢機卿とともに、若く影響力の弱いフランソワ2世を操り、実権を掌握しました。しかし、1560年にフランソワ2世が急死すると、ギーズ家の勢いは急速に衰え、シャルル9世の即位とともに、フランソワは領地へと引退しました。

ユグノー戦争と暗殺

1562年、ユグノー戦争が勃発すると、フランソワは再び歴史の表舞台に立ちます。当初、摂政カトリーヌ・ド・メディシスはユグノーに寛容な政策をとっていましたが、カトリック勢力の巻き返しを図るため、フランソワは旧敵であるモンモランシー公やサンタンドレらと手を結び、カトリック陣営のリーダーとして戦うことになります。スペインやオーストリアとの連携を深める彼の動きに対し、ユグノー側は危機感を募らせ、1563年2月18日、フランソワはプロテスタントによって襲撃され、重傷を負います。そして、6日後の2月24日、コルニー城で息を引き取りました。暗殺の背後には、プロテスタントの指導者であるコリニー提督の存在があったとされています。

家族

1548年、フランソワはエステ家のアンナ・デステと結婚し、7人の子供をもうけました。

アンリ（後のギーズ公）
カトリーヌ（モンパンシエ公ルイ3世妃）
シャルル（後のマイエンヌ公）
ルイ（ランス大司教、ロレーヌ枢機卿）
アントワーヌ
フランソワ
マクシミリアン

フランソワ・ド・ロレーヌは、その軍事的な才能とカリスマ性で、激動の16世紀フランスにおいて重要な役割を果たしました。彼の生涯は、宗教対立という時代の暗い影を色濃く反映しており、その死は、フランスの歴史に大きな影響を与えた出来事として記憶されています。

参考文献

Carroll, Stuart (2009). Martyrs and Murderers: The Guise Family and the Making of Europe. Oxford University Press
Knecht, R.J. (1989). The French Wars of Religion, 1559–1598. Longman Group

関連項目

ギーズ家
ユグノー戦争
ヴァシーの虐殺

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