フランソワ1世の肖像

ティツィアーノによるフランソワ1世の肖像

『フランソワ1世の肖像』は、イタリア・ルネサンスの巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1538年に制作した油彩画です。この作品は、当時のフランス国王フランソワ1世を描いたもので、現在はパリのルーヴル美術館に所蔵されています。この肖像画は、歴史的にも芸術的にも重要な価値を持つ作品として、広く知られています。

フランソワ1世について

フランソワ1世（1494年-1547年）は、フランス国王として知られています。彼は芸術の保護者としても有名で、イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチをフランスに招き、アンボワーズのクロ・リュセ城を与えたことでも知られています。ジョルジョ・ヴァザーリの記述によれば、レオナルド・ダ・ヴィンチはフランソワ1世に看取られて亡くなったとされています。

政治面では、1515年の即位後、イタリア政策を継承し、マリニャーノの戦いで勝利を収めました。また、ローマ教皇レオ10世との間でボローニャ政教協約を結ぶなどの成果を上げました。フランソワ1世は、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の死後、後継者候補となりましたが、カール5世に敗北。その後もカール5世と対立を繰り返しましたが、後に和解しました。

作品について

ティツィアーノは、帽子をかぶり横顔を見せるフランソワ1世を描いています。この肖像画は、詩人ピエトロ・アレティーノの依頼によって制作されたと考えられています。興味深いことに、ティツィアーノはフランソワ1世に直接会うことができず、ベンヴェヌート・チェッリーニが制作したメダルを参考に肖像画を制作しました。そのため、古代ローマ皇帝を思わせる側面像となっています。

この肖像画は、ティツィアーノの卓越した技法によって、国王の威厳と内面の力が表現されています。その図像は享楽家としての活力に溢れ、統治者の最も有名なイメージの一つとして確立しました。ジョルジョ・ヴァザーリは、ティツィアーノが1516年にフランソワ1世がボローニャで教皇レオ10世と会談するためにイタリアに滞在した際に、国王を目の前にして肖像画を描いた可能性を示唆していますが、この説が正しければ本作は2作目ということになります。いずれにせよ、ティツィアーノがフランソワ1世のより新しい図像を必要としたのは確かでしょう。

また、1548年にはウルビーノ公のために3作目のバージョンが制作されました。ウルビーノ公は、1539年に若い頃のフランソワ1世を描いた肖像画も所有していました。

作品の来歴

この肖像画は、完成後、ピエトロ・アレティーノによってフランソワ1世に献上されましたが、後にフランス王室のコレクションから除外されました。その後、優れた美術収集家であった枢機卿ジュール・マザランの手に渡り、枢機卿の死後、1665年に国王ルイ14世によって買い戻され、再び王室コレクションに加わりました。

他のバージョン

この肖像画にはいくつかのバージョンが存在します。特に有名なのは、ヘアウッド・ハウス、オスロのセムチェシェン・コレクション、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークにあるバージョンです。ヘアウッド・ハウス版は、帽子をかぶっていないフランソワ1世の横顔を描いており、ルーヴル美術館版の下絵あるいは完成した肖像画の記録として使用されたと考えられています。この作品は、ティツィアーノの死後も工房に残されていたもので、後にバルバリゴ家によって所有されました。

後世への影響

この肖像画は、バロック期のジル＝エドメ・プティやジャン・マサールなどの画家や版画家によって版画が制作され、広く知られるようになりました。また、フランスの新古典主義の画家ジャン＝オーギュスト＝ドミニク・アングルは、歴史画『レオナルド・ダ・ヴィンチの死』で、この肖像画のフランソワ1世の図像を引用しています。

ギャラリー

（版画による複製、アングルの歴史画の画像は、必要に応じて追加してください。）

脚注

（必要に応じて、脚注を追加してください。）

参考文献

黒江光彦監修『西洋絵画作品名辞典』三省堂（1994年）
イアン・G・ケネディー『ティツィアーノ』Taschen（2009年）

外部リンク

* ルーヴル美術館公式サイト, ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『フランス国王フランソワ1世（1494年-1547年）の横顔』

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